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新型コロナウイルスの感染拡大により、組織文化が弱体化する恐れがある。在宅勤務が続き対面でのコミュニケーションが取れなくなり、共通の価値観を強化できなくなっているのだ。先行き不透明な環境で成長を続けるには、変化にリアルタイムで適応する文化をはぐくむ必要がある。本稿では、そうした組織文化の構築・維持に有効な3つの行動パターンを紹介する。


 私たちがこの数カ月間に話を聞いた企業リーダーの多くは、これまで何年もの歳月を費やして、成果に結びつく組織文化をはぐくもうとしてきた。

 具体的には、ビジネスを成功させるために欠かせない行動を最優先するという点において「戦略面で適切」で、しかも社員がそれを額面通り受け取り、重要視するという点において「強力」な文化を築くことを目指してきた。このような文化を持つことは、傑出した人材を獲得してつなぎとめ、高い財務成績を上げるうえで効果がある。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、いま組織文化が弱体化する恐れがある。

 あなたの会社では、社員同士が直接対面できず、共通の価値観を強化できないせいで、組織文化が損なわれる危険はないか。現在の厳しい環境の下で適切な判断を下すために、組織文化を手引きにすることが難しくなっていないか。主にリモート勤務方式で仕事をしている時期に、組織文化を築き、そこから好ましい影響を生み出し続けるためには、どうすればいいのか。

 研究によると、戦略面で適切で、しかも強力な――つまり、多くの社員が共有していて、大きな価値を認めている――組織文化を築いたとしても、それだけでは成功を長続きさせられない。リアルタイムで状況に適応していくことを得意とする組織文化もはぐくまなくてはならないのだ。

 本稿の筆者の一人(チャットマン)が行った研究によれば、戦略面で適切で、強力で、しかも激しく変化し続ける環境に素早く適応できる組織文化を持った企業は、適応力に劣る同業種の企業に比べて年間の売上高が15%多かった。

 いまのように歴史的に見て特別な時期には、適応力の高い組織文化――その土台を成すのは、イノベーションと実験に前向きで、新しい機会を素早くものにする能力だ――が特に重要だ。

 企業のリーダーは、社員が最も重要な活動に集中することを後押しする組織文化をはぐくみ続ける必要がある。コロナ禍により前例のない試練と変化に直面しているときも、これを怠ってはならない。

 適応力のある組織文化を構築・維持するには、どのような行動パターンが有効なのか。以下に、3つの行動パターンを紹介したい。