多国籍企業が抱えるリスク

 近年、社会的・環境的基準を満たすサプライヤーでなければ取引しないという多国籍企業が増えている。それらの企業は通常、1次サプライヤーにそうした基準を守るよう求め、さらに1次サプライヤーに納入する2次サプライヤーに対しては、1次サプライヤーを通じて基準の遵守を徹底させようとする。同様に、2次から3次、そして末端のサプライヤーまで、同じ基準が守られていくことを期待する。

 こうすることで、多国籍企業はサプライチェーン全体にサステナブルな手法が広がることを狙う。なお、筆者らは「サプライチェーン」の代わりに、「サプライネットワーク」という言葉を好んで使っている。

 これは理屈としては素晴らしいが、実現するのは難しい。実際、サステナブルなサプライネットワークを標榜するいくつもの企業が、スキャンダルに見舞われている。サプライヤーがサステナビリティ基準を認識していたにもかかわらず、それを守らなかったためだ。