瞬く間に顕在化した
サプライチェーンの脆弱性
新型コロナウイルス感染症が沈静化した時には、世界の様相は一変しているだろう。2020年2月に中国で始まった供給ショックと、その後のグローバル経済の悪化に伴う需要ショックは、全世界の企業の生産戦略やサプライチェーンの脆弱性を顕在化させた。一時的な貿易制限、医薬品や重要な医療用品などの不足は、そうした脆弱さを浮き彫りにする現象だった。
そんな動きと米中貿易戦争が相まって、経済ナショナリズムが勢いを増すこととなった。その結果、全世界のメーカーは、政治的な圧力や競争上の必要性から、国内生産を増やし、本国での雇用創出を高め、リスクが高いと思われる原材料への依存を減らし(あるいはなくし)、グローバルサプライチェーン内の在庫を最小化するというリーン生産戦略を見直す必要に迫られるだろう。
だが、変わらないものも多い。消費者は引き続き(特に不景気の時は)低価格を望むだろうし、企業はコストが高い国内市場で生産するからといって、その分を価格には転嫁できないだろう。競争がある以上、そうならざるをえない。また、効率的な経営、資本や生産力の節約を求める圧力は今後もやまないだろう。