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人種差別や性差別など職場の不平等を解消する手段として、多くの企業がダイバーシティ研修を実施している。ただ、それがどれほど素晴らしい内容であったとしても、1時間や1日、あるいは1週間の研修を実施したところで、人種や性別へのバイアスを取り除くことは不可能だ。ダイバーシティ研修の内容そのものよりむしろ、それを実践する際のシステムを変えるべきだと筆者らは主張する。


 ダイバーシティ研修は、人種差別や性差別が存在するというステレオタイプに基づくものであり、連邦政府機関および連邦政府と事業契約を結ぶ企業や大学は、ダイバーシティ研修を行ってはならない。ドナルド・トランプ米大統領が、そんな大統領令に署名したのは9月22日のことだ。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によると、経済界は、この大統領令は言論の自由と、職場における平等を傷つけるものだとして反発しているという。言論の自由を傷つけるかどうかは法律家や有権者の判断に任せるとして、職場の平等を傷つけるかどうかについては、筆者らが答えを示すことができる。

 社会学者の立場から一つ言えるのは、ダイバーシティ研修が、職場の不平等を是正する手段として過大な役割を担ってきたことだ。その適用範囲は、ありとあらゆる領域に及ぶ。

 スターバックスは悪評が立つたびに、全社的なダイバーシティ研修を実施する。化粧品専門店セフォラも、不都合な事件が明らかになったとき同じ対応をとった。フォード・モーターは、人種差別や性差別の集団訴訟に負けた時、ダイバーシティ研修を増やすことを約束した。BMWが人種差別訴訟に負けたときも研修を増やしている。

 トランプの大統領令を受けて、企業や大学では、ダイバーシティ研修を継続しても法的に問題はないのかという不安が高まっている。すでに司法省は、ダイバーシティ研修を凍結した。

 しかし、ダイバーシティ研修は、そこまで懸命に守る価値があるものなのか。「そうでもない」というのが、筆者らが得た答えだ。

 数百の企業の過去数十年分のデータを調べて、どのような平等措置に効果があるのか分析したところ、典型的なダイバーシティ研修はダイバーシティを推進しないだけでなく、実のところ、管理職レベルのダイバーシティを低下させていることが判明した。さらに、非白人に機会を与えるためには、もっとシンプルなマネジメント法のほうが効果的であることがわかった。