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顧客中心主義を掲げながら、まず自社の製品やサービスをいかに拡充するかを考える企業は少なくない。製品やサービス中心ではなく、本当の意味で顧客を第一に考えるにはどうすればよいか。本稿では、ドライバー不足に悩むトラック輸送業界に革新的なソリューションをもたらしたリビゴ、顧客が商品探しと会計に手間取る小売り店舗のあり方を根本から変革するホインター、住宅ローンのモバイルアプリで理想の家探しを全面的にサポートするDBS銀行の事例を紹介しながら、真にイノベーティブなアイデアを導き出すための3つの視点を論じる。


 未来のガソリンスタンドと聞いて、あなたは何を想像するだろうか。今後、電気自動車がさらに普及しても、あと数年、あるいは数十年は、ガソリン車が乗り物の主流であり続ける可能性は高い。

 筆者は何百人ものシニアエグゼクティブに、未来のガソリンスタンドを想像してもらってきた。カフェを併設する、アマゾンで注文した荷物を受け渡す場所をつくる、ロボットが給油する。こうしたお馴染みのアイデアは、顧客に付加価値を提供しようとするものだ。

 ただし、これらは本当に顧客中心のアイデアなのだろうか。顧客がガソリンスタンドでしようとしていること、すなわち便利に燃料を補給できることに向き合っているだろうか。その答えはノーだ。

 大半の人にとって、ガソリンスタンドに行くことは不便だが、やむをえない。車には給油しなければならないが、ガソリンスタンドに行くのは手間がかかる。この問題を、私たちはどのように解決できるだろうか。

 スタンドにスターバックスを併設しても、解決策にはならない。では、ガソリンを顧客に配達すればよいのではないか。

 非現実的なアイデアだと思うかもしれないが、米国では最近、フィルド(Filld)やブースター(Booster)などがまさに、ガソリンを顧客に配達するオンデマンドサービスを始めている。

 ガソリンが必要になった顧客がアプリで注文すると、これらの会社が配達して給油もしてくれる。自動車自身が、ガソリンが足りなくなりそうだと感知して自動で注文する未来も、そう遠くないかもしれない。

 どの企業も、自社は顧客中心主義だと信じている。しかし、その大半は、製品もしくはサービス中心のアプローチだ。顧客の立場に立つ(彼らはとにかくガソリンスタンドに来たくないのだと理解する)のではなく、自分たちが提供するものをいかに拡充するか(ガソリンスタンドにどのようなサービスを追加するか)を考えている。

 本稿では、企業が本当の意味で顧客を第一に考えることによって、真にイノベーティブなアイデアを導き出す3つの視点を説明する。