ESG活動をいかに
競争優位につなげるか

 2010年代半ばまで、ESG(環境、社会、ガバナンス)関連のデータ、すなわち企業の二酸化炭素排出量、労働慣行、取締役会の構成などに関するデータに注意を払う投資家はほとんどいなかった。今日では、これらのデータは大いに活用されている。

 ESGへの取り組みが甘い企業を投資対象から外す動きもあり、その背景には「ESG分野の低評価をもたらす要因は、財務業績の落ち込みにつながるだろう」という想定がある。ESGで優れた実績を持つ企業を探し出そうとする投資家もいる。これは、模範的なESG活動は優れた財務成果をもたらすという期待、あるいは倫理上の理由から、「グリーンファンド」だけに投資したいという事情による。ESGデータをファンダメンタルズ分析に組み込んだり、アクティビスト(物言う株主)の立場でESGデータを活用し、先回りして株式を買い集めてから、企業に行いを改めるよう迫ったりする例もある。

 世界規模でパンデミックが起き、それに伴い景気が後退する状況下でも、ESGが投資家にとって重要であり続けるのか。その確証はない。しかし、筆者は重要であり続けるだろうという立場を取っている。なぜなら、インクルージョン(包摂)や気候変動といった社会のメガトレンドに沿って、長期的な視点で経営される企業は、予想外の衝撃や苦境に直面しても立ち直りやすいからである。