
米国のブラック・ライブズ・マター運動に象徴されるように、企業はもはや政治的・社会的な問題と無関係ではいられない。会社としての立場を表明すべきだと迫られることもある。ただし、安易な意見を述べたり、行動を起こしたりすれば、ステークホルダーの信頼を失いかねない。そうした事態を避けて戦略的に対応するために、筆者は3つの質問からなるフレームワークを作成した。
ブラック・ライブズ・マター。貿易政策。移民問題。この4年間に企業は、従業員、顧客、投資家、事業を展開する地域社会などから注目を浴びる政治的・社会的運動について、その立場を公に表明するようプレッシャーを受けてきた。
エデルマン・トラストバロメーターの調査によると、世界各地の企業で働く人の54%が、CEOは自分が関心を持つ政治と社会の問題について公に発言すべきだと考えている。同じように消費者の53%は、すべてのブランドは自社のビジネスに直接影響を与えない、少なくとも一つの社会問題に関与する責任があると答えている。
企業や経営者がすべての問題に関して意見を述べることは不可能であり、現実的ではない。立場を公言する明らかな道徳的理由がある問題もあれば、理由がそれほど明確ではないものもあるだろう。そのため企業や経営幹部が思案するのは、いつ意見を述べるべきなのかということだ。
発言することを選択した場合は、どのように準備し、対応すべきか。発言は会社が主導すべきか、もしくは問題に対してより有意義な影響力を発揮するために他の組織と協力すべきか。それとも、まったく発言しない方がよいのだろうか。
企業がこうした判断を下すうえで役立つよう、筆者は過去5年間のリサーチとコンサルティングの経験に基づいて、下記のフレームワークを構築した。
アプローチの指針となる3つの質問
はじめに、企業は次の質問について考えるべきだ。
(1)問題は会社の戦略と一致しているか
あなたの戦略は会社のミッションと価値観に一部基づいているはずだ。立場を表明する問題がそれらと一致していなければ、発言はステークホルダーや一般社会から信頼されないだろう。
(2)問題に有意義な影響を与えることができるか
あなたの会社には、変化をもたらすことのできる専門性とリソースがあるだろうか。そして、あなたは口先だけでなく行動で示す用意があるだろうか。それができないのに意見を述べれば、偽善者であるとか「ウォーク・ウォッシング(社会正義を利用すること)」だと見なされる恐れがある。
(3)ステークホルダーは発言することに同意するか
会社の主要なステークホルダーが提案された立場に概ね同意していれば、将来のビジネスを混乱させるリスクを大幅に軽減できることは明らかだ。しかし、ステークホルダー同士で意見が分かれる時は、自社のビジネスに対する彼らの相対的な重要性を慎重に議論し、秤にかけなければならない(影響力が限られた小規模な顧客層と、会社の最大の投資家との比較など)。