本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。正月早々ですが、厳しい経済環境が続きます。まずは生き残ることが大事という現在の状況で、今月号は、組織のレジリエンス(再起力)の特集を組みました。


 スタートは、アイリスオーヤマ会長の大山健太郎氏へのインタビューです。「会社の目的は永遠に存続すること」を企業理念に掲げ、「仕組み至上主義」の経営で、多くの危機をチャンスに変え、成長を続けています。

 今回のコロナ禍においてもマスク事業を急拡大するなど、顧客ニーズに応えて売上げを伸ばしています。そこには、「スピード」「多能工」「設備の余裕」という仕組みが機能しています。簡単には真似できませんが、学ぶべき点が多い経営論です。

 特集2番目はマッキンゼー・アンド・カンパニーが、永続的に成長するレジリエント・カンパニーの条件を、世界2000社超の研究と、トヨタ自動車やサントリー、イケアなど当該企業17社の分析で抽出した論文です。現下の苦境を乗り切り、来るべき次の危機に備えて、成長を続けるアプローチを明らかにしています。

 コロナ禍のように、人々の予見能力や想像を超える「未知のリスク」には、標準的な戦略では対抗できません。特集3番目は、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授ロバート・キャプラン氏らがこの種のリスクの重要な特徴を明らかにし、発生を検知する方法を提示したうえで、経営資源やケイパビリティを駆使して、リスクが顕在化した際の影響を軽減する方法を詳述しています。

 特集4番目は、組織のレジリエンスを高める方法論です。成功を続ける組織は、業務遂行において3つの手法を活用しています。予測可能な状況で効果を発揮するルーチン、不透明な環境でも迅速な意思決定を可能にするヒューリスティックス、緊急時に現場で対応する即興的手法です。これらの手法を臨機応変に組み合わせ、使いこなす方法を紹介します。コロナ危機における医療機関の事例は、リアリティと納得感があります。

 グーグルのデータサイエンティストが、「危機に強い組織はアナリティクスに投資する」と論じるのが特集5番目の論文です。不確実性下で、進むべき方向を把握し、変化に素早く対応するリーダーは、アナリティクスを活用しています。ただし、その能力は一朝一夕にはつくれません。組織としていかに蓄積していくかを示します。

 HBRは毎年、業績評価等をもとにした「世界のCEOベスト100」を発表してきましたが、今回、その中止を決めました。白人の男性ばかりがランクインするからです。世の現実を反映しているわけですが、人種やジェンダーの平等に関する言説が高まる今日、現状を讃えるような企画は行うべきでないと考えたのです。その代わりに、そうした不平等をなくす論考の編集に、今年も注力していきます。