
仕事で大きな失敗をしたり、同僚との出世競争で負けたりすると、フラストレーションや怒りを感じるのは避けられない。リーダーは部下がこうしたネガティブな感情を抱いているのを察すると、チームが正常な状態に戻れるよう、封じ込めにかかることが多い。しかし、負の感情を抑制するよう働きかけるのではなく、生産的な会話を通じて、仕事のモチベーションに変えることもできる。本稿では、そのための3つのポイントを紹介する。
挫折や逆境は、不可避的にネガティブな感情を伴うものだ。大きな顧客を失った時、昇進を飛ばされた時、四半期の成績が散々だった時、人は落胆し、フラストレーションや怒りを感じる。
憤慨した部下に食ってかかられたリーダーは、こうしたネガティブな感情はチーム全体に広がる恐れがあると考えて、封じ込めにかかることが多い。このような部下を「問題」と見なして、チームが正常な状態に戻れるように、迅速に対処しようとするリーダーもいる。
だが、多くのスポーツコーチや企業エグゼクティブを見ると、リーダーは部下のネガティブな感情をモチベーションに変え、実力を発揮するパワフルなツールに変える手助けができる。
ネガティブな感情に伴うフラストレーションとエネルギーは、一段と決意を固めて、ハードワークにいそしむよう方向づけることができる。部下が落胆や失敗を経験したら、リーダーであるあなたは、それを彼らのパワーに変えて、彼らを強くする手助けができるのだ。
ポイントは、ネガティブな感情から生産的な会話を生み出すことだ。そのためのカギは3つある。
●ネガティブな感情を見極めてエンゲージする
多くのリーダーは、部下をネガティブな感情から引っ張り出すか、そんな感情を忘れさせようとする。しかし、どちらのアプローチも有効ではない。どちらも強い感情を覆い隠し、その下でぐらぐら煮えたぎるエネルギーを無視しているからだ。
そうではなく、落胆している部下をエンゲージしよう。ネガティブな感情を指摘し、それについて話すことを促そう。
世界の5大コンサルティング会社に所属するあるシニアパートナーは、昇進を見送られた後、その決定の原因になったという、同僚たちの自分に対する評価を見せられた。とても批判的な内容で、彼はショックを受け、傷ついた。親しい仲間たちは彼をネガティブな感情から救い出そうとして、「きみは素晴らしいよ」「自分を責めるな」「すぐに取り返せるさ」と言った。
こうした善意の励ましは、会話を打ち切ってしまう効果がある。「助けにならなかった」と、彼は筆者に語った。「私が表面的な感謝の言葉をぶつぶつつぶやいた後は、会話がストップしてしまった」
もっと有効な方法がある。部下のネガティブな感情を指摘して、本人が気持ちを吐露するきっかけにするのだ。「本当にがっかりしたようですね」と筆者が言うと、彼はしばらく押し黙った後に言った。「正直に言うと、がっかりはしていません。むしろ、裏切られた気がするのです」
間違った指摘をすることを恐れる必要はない。上述のように、筆者も間違った。できる限りの推測をすればよいのだ。
相手の感情を指摘すると、その推測が正しいか、間違っているか、相手はすぐに教えてくれるものだ。むしろ本当の気持ちを言わずにいられない。おかげでそのシニアパートナーと筆者は、会話を進めるために必要な基本情報を共有することができた。
彼は、怒っているだけでなく、傷ついたことも明らかにした。戦いたいと思ったが、辞めたいとも思ったと打ち明けた。自分の気持ちを吐き出すうちに、彼は目に見えて元気になっていった。感情の下に隠れていたエネルギーが顔を出した。リーダーが部下を建設的な方向に導きたいとき必要なのは、このエネルギーだ。