
不確実性の高い状況下で、リーダーは多くの困難を抱えている。重要な決断を迫られれば、恐怖に囚われて、身動きできなくなることもあるだろう。だが、それでも困難に向き合い、前進するには、セルフ・コンパッションが欠かせない。自分自身に対して思いやりを持つことは、甘やかしや自己満足とは違う。セルフ・コンパッションはレジリエンスの基盤であり、困難な現実と向き合う勇気を養うための重要なスキルなのだ。本稿では、リーダーシップの土台となるセルフ・コンパッションを養う方法を提案する。
人の命や生活に大きな影響を与えるビジネス上の重要な決断を迫られた時、リーダーが恐怖や疑念、批判に囚われてしまうのも無理はない。しかし、不確実性と混乱の時代に必要なのは、精神の明晰さ、感情のバランス、不屈の心、そしてビジョンだ。
自信喪失や無気力から明晰さと行動力へと前進するためには、ある誤解されがちなスキルが欠かせない。「セルフ・コンパッション」だ。
筆者らは数多くのリーダーを対象に、セルフ・コンパションが感情的知性(EI)とリーダーシップの有効性に果たす役割について、トレーニングを行ってきた。その経験に基づいて、この重要なスキルを養うためのカギとなるヒントとテクニックを提案したい。
まず、セルフ・コンパッションを正しく理解することが有用だ。セルフ・コンパッションとは、簡単に言えば、挫折や困難に直面している友人や同僚に対するのと同様の視点を、自分自身に向けることである。簡潔なスキルだが、私たちの多くにとって驚くほど難しい。
この分野における実証的研究の先駆者でテキサス大学オースティン校准教授のクリスティン・ネフによれば、セルフ・コンパッションには核となる3つの要素がある。すなわち、自分への優しさ、共通の人間性、そしてマインドフルネスだ。
多くの人は、セルフ・コンパッションは自分自身を甘やかすことであり、自己満足につながると思い込み、それを避けようとする。しかし実際は、セルフ・コンパッションはレジリエンス(再起力)の基盤となり、困難な現実と向き合う勇気を養う手助けをする。
リーダーとしての自身の努力に対して、批判的で辛辣な態度を取るのではなく、建設的に向き合うことによって、困難や予測不可能な状況を乗り切る能力を身につけることができる。