
Oliver Furrer/Getty Images
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大企業のスキャンダルが露呈すると、組織がいっきに崩壊することが少なくない。その最たる例であるエンロンの不正会計事件を分析すると、組織を機能不全に陥れる根源に「過信の伝染」があることを筆者らは指摘する。従業員が自分は優秀で無敵だと自信過剰になると、過信のマインドセットが周囲にも広がり、規範として定着してしまう。そうなれば、適切な意思決定を妨げるのは自明だろう。本稿では、過信が伝染する仕組みを明らかにし、行きすぎた楽観主義が組織に及ぼす危険性を論じる。
2001年に発覚したエンロンの不正会計スキャンダルは、ウォール街を芯から揺るがし、年金や株式の巨額損失に見舞われた何千もの人々を幻滅させ、憤らせた。当時、米国で7番目の大企業だったウォール街の巨人が、一夜にして崩壊したのはなぜか、人々はいまも疑問に思っている。
いったい何が問題だったのだろうか。答えを探ろうとすると必ずたどり着くのが、エンロンの最高幹部であったジェフリー・スキリングとケネス・レイだ。彼らの大規模な不正会計、汚職、偽装は、エンロンの弱点を覆い隠していたが、それらが露呈すると同社は破滅に追い込まれた。