
新型コロナウイルスの感染拡大で働き方が大きく変わる中、ほとんどの組織で生産性が低下している一方、コロナ禍以前と変わらないかそれ以上に生産性を上げている企業もある。その違いは何から生まれるのか。筆者らによると、「時間」「才能」「意欲」という3つの希少な資源をマネジメントできていたかが、成否を分けたという。
新型コロナウイルスの感染が広がる中で、ほとんどの企業が新しい働き方への移行を進めてきた。社員がリモート勤務を行い、顧客や同僚とバーチャルでやり取りするケースも珍しくなくなった。職場に出勤して働いている人たちも、以前とは仕事の仕方が変わった。
いま、誰もが最善を尽くしている。しかし、コロナ禍の下、企業の生産性はコロナ禍以前と比べてどう変わったのか。
この問いに一言で答えるとすれば、「会社によって異なる」と言うほかない。企業の中には、最新のテクノロジーを活用して効果的・効率的にコラボレーションを実現し、コロナ禍においても目を見張る生産性を維持している会社もある。しかし、ほとんどの企業は、1年前より生産性が低下している。
傑出している企業とその他大勢の企業の違いを生んでいる主たる要因は、コロナ禍以前に、社員の時間、才能、意欲という希少な資源をどのくらいうまくマネジメントできていたかだ。コロナ前に光り輝いていた企業はコロナ後も輝き続けているのに対し、コロナ前に精彩を欠いていた企業は苦戦を強いられている。
筆者らの2017年の著書『TIME TALENT ENERGY』では、大企業の生産性の違いを左右する3つの主たる要素を示した。
・日々の業務の中で、一人ひとりの社員が生産的な仕事にどれだけの「時間」を費やせているか。過剰なデジタルコミュニケーションや不必要な会議、官僚主義的な手順や手続きによって、集中力を奪われないことが重要だ。
・一人ひとりの社員が仕事でどのような「才能」を発揮するか。特に社内屈指の優秀な人材がどのように配置され、チームとして行動し、リーダーによって導かれるかが大きな意味を持つ。
・一人ひとりの社員がどれくらいの「意欲」を仕事に注ぎ込む気になっているか。それを通じて、どの程度、会社と顧客、そのほかの利害関係者の成功に貢献するつもりがあるか。
社員の希少な時間と才能と意欲のマネジメントが際立ってうまくいっている企業(具体的には、筆者らの調査で上位4分の1に位置する企業の平均)は、それ以外の企業(残り4分の3の平均)に比べて生産性が40%高い。この圧倒的な生産性の格差は、傑出している企業が成功を収めるうえで大きな強みになっている。
新型コロナウイルスの感染拡大は、社内の労働力の生産性を高める3つの要素(時間、才能、意欲)のすべてに影響を及ぼした。しかし、傑出している企業が受けた影響は、その他大勢の企業とは大きく異なっている。