
平均寿命が延びて、定年以降も働きたい高齢者が増えた。女性の就業者数はますます増えている。子育てに積極的に関わりたいという男性も若い世代に多い。企業はこうした変化を正確にとらえ、「学校を卒業後は、一心不乱に働き、完全にリタイアする」という旧型のモデルを早急に見直す必要がある。従業員のライフステージに合ったキャリアパスを整備するには、単に方針や制度を変えるだけでは不十分だ。ワークライフをペース配分の欠かせないマラソンととらえ、新たなキャリアパスを組織に実現するための3つの方法を紹介する。
人生100年時代を迎える中、従来のキャリアマップを早急に見直す必要が生じている。
英国では、50歳以上の就業者が2018~19年に約30万人増加し、全年齢層で最速の伸びを見せている。全就業者に占める割合は、3分の1に迫る。
米国では、全就業者に占める65歳以上の割合は20%と、1985年に比べて倍増している。このうち53%は大卒者だ。自分が80~90歳まで生きるかもしれないとなると、65歳でリタイアしてゴルフに勤しんでも、暇を持て余すかもしれないと、ベビーブーム世代は考え始めたようだ。
つまり、私たちは「標準的なキャリアパス」を定義し直す必要に迫られている。
もちろん、現在のキャリアパスの在り方を変えている要因は、寿命だけではない。高年齢になっても働き、就業期間が長期化するだけでなく、働く女性はますます増えている。そして女性のキャリアパスが、伝統的なモデルと一致することはほとんどない。
同時に、最近では若い世代の男性の多くが、共働きの妻と子育てに関わるようになり、彼らの仕事に対する期待も大きく変化している。米国では現在、マネジメント職と専門職に占める女性の割合は51%を超え、ミレニアル世代のカップルのほぼ80%が共働きだ(ベビーブーム世代の場合、共働きの比率は47%である)。
昔ながらのライフプラン、すなわち(1)教育を受ける、(2)働く、(3)リタイアするという3段階では、35年間、全力疾走するようなものだ。20代にスタートダッシュで飛び出し、30代で加速をかけ(子育ては妻に任せて)、40代でスケールし、50代でリードする。バラの香りをかぎたければ、立ち止まらずに、走りながらにしろ。バラを愛でることなんて、リタイア後にいくらでもできる――。
だが、この旧型のモデルは、急速に時代に合わなくなってきている。
現在のキャリアは、マラソンのように考える必要がある。50年、あるいは60年に及ぶ可能性があり、教育や娯楽、子育て、高齢者のケアに注力する時間と、職場で一緒に働く4つの世代に自分の知識や経験を引き継ぐ時間を与えられているのだ。
この「キャリアマラソン」をサポートするために、そしてジェンダーバランスと世代バランスの両者がもたらす恩恵を享受するために、企業は新しい現実に適応しなくてはならない。
筆者がさまざまな業界のクライアントに助言してきた経験から、企業が組織と従業員を新たな未来のキャリアパスに適応させるシンプルな方法が3つある。以下に紹介しよう。