●タイミングの悪さ

 新型コロナウイルスのパンデミックは、すべての当事者の焦点を変えさせた。

 医療提供者は危機への対応にすべてのエネルギーを投じなければならず、選択外科手術や緊急を要さない手術の延期やキャンセルで、財政的に大きな打撃を受けている。そのため、危機が収束するまでは新しいアイデアは検討しておらず、収束しても新たなリスクを取ることは考えないだろう。

 実際、ある大規模大学病院のCEOは筆者にこう語った。「今後2年間、リスクのある契約はできるだけ多く終了する計画だ」

 では、どうすればいいのか。過去の記事でも述べたが、ジョー・バイデン新政権は医療保険改革法(ACA)、具体的にはメディケア・アドバンテージ・プランを拡大し、65歳未満の人々が手頃な保険を利用できるようにすることに注力すべきだ。

 いわゆる「パブリックオプション」が導入されれば、65歳未満の個人はみずから保険に加入し、雇用者は政府が定めた金額でメディケア・アドバンテージ・プランを提供することができる。現在、メディケア加入者の35%がこのプランを選択し、彼らの満足度は高い。

 雇用者は、パブリックオプションか認可された民間企業を通じ、競争力のあるメディケア・アドバンテージ・プランを従業員に提供できる。従業員の給与の20%をプールすることになるが、民間保険に現在支払っている25~35%より低い。

 このプランはまた、貧困者は自動加入制になる可能性があり、メディケイドの加入者にとっては同じように競争力のあるオプションが与えられる。大企業が自己保険を希望すればそれは可能だが、実質的には多額のコストがかかる。

 このシナリオで提示しているのは、強制的なものではなく選択肢であり、雇用者、保険者、医療提供者、政府を超党派的に合意に導く唯一の方法だ。これはうまくいく可能性がある。ほかにはないのだ。


HBR.org原文:Why Haven Healthcare Failed, January 06, 2021.