
幸せな人生を目指して、努力を重ね、多くを手に入れたにもかかわらず、心の底から幸せだと感じられない。そして、自分が本当に望んでいた人生とはかけ離れていることに気づく。筆者は自身の経験から、常に幸せでいることは現実的ではなく、不健全だと指摘する。むしろ人生には起伏があり、ポジティブ感情だけでなくネガティブ感情も受け入れ、みずからの意志を持って適応しようとする力が人生を豊かにするという。本稿では、そうした自発的な適応力に欠かせない3つのスキルを概説し、それぞれの習得方法を紹介する。
私たちの多くは、幸せこそが最終目的地だと思わされている。まるで、正しい選択をして、失敗から学び、努力を続ければ、いつかたどり着ける場所であるかのように。
そして、ひとたびその場所を見つければ、人生は永遠に満足できるものになると教えられている。だから私たちは圧倒され、自分には何かが足りないと思いながらも、その夢を追いかけ続ける。立ち止まり、「本当にそうなのか」と疑問に思うことはけっしてない。
しかし、その考え方には欠陥がある。幸せは目的地ではない。それは心理状態であり、常にその状態にいる必要はないのだ。そんなことは不可能だし、不健全でもある。
人生とは複雑で不確実なものだ。山もあれば、谷もある。あなたがずっと夢見ていた昇進を果たした日は、初めて失恋した日かもしれない。悲しみや痛みを知らなければ、どうして幸福を味わえるだろうか。
私がそのことに気づいたのは、39歳の時だった。それまでは、リストのチェックボックスに次々とチェックを入れていけば(華やかなキャリア、2階建ての家、クールな車、海外旅行)、自分は「成功」にたどり着き、幸せな毎日を送れると思っていた。
ところが、いざその場所に到達してみると、満たされた気分にはなれなかった。自分が描いていた成功の定義が、他人の定義に基づいていたことに気づいたのだ。
何を見落としていたのだろう。自分を本当に幸せにしてくれること、すなわち人とつながること、他者の人生にポジティブな影響を与えること、そしていまを生きることは、成功を追い求めているうちにどこかに追いやられてしまったのだ。
私は、現状を破壊しようと決意した。世界的企業のエグゼクティブとしての職を辞し、パースからメルボルンに家族で引っ越し、18年間続いたパートナーと別れて、あらゆる人がもっと幸せに生きるのを助けることをひたすら目指し、ハッキングハッピー・コ(HackingHappy.co)を創業した。
この会社を立ち上げた目的は、幸せとはどのような状態かを再定義することで、もっと現実的かつ健全な方法を通じて、幸福につながるスキルと言葉を自分自身と他者に提供することだった。
そして、みずからに大胆な目標を課した。2025年まで、自分なりの幸せを見つける方法を1000万人に伝授することだ。