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コロナ禍でデジタルサービスの需要が急速に高まる中、従来の広告チャネルへの支出を減らす一方、SNSへの投資を強化した企業は多い。単に投資額が増えただけでなく、そこから得られるリターンも増加している。コロナ後もSNSを最大限に活用し、ブランドと顧客をつなげる存在であり続けるために、CMOは何をすべきなのか。本稿では、そのための10のポイントを紹介する。


 新型コロナウイルス感染症を踏まえて特別に実施したCMO(最高マーケティング責任者)へのアンケート調査から、コロナ期間中のマーケティングにおいて、SNSは非常に重要となっていることが判明した。

 調査結果によれば、マーケティング予算に占めるSNSへの支出は2020年2月の13.3%から同年6月には23.2%と、74%増加した。一方、従来型の広告への支出は減少が見込まれる。CMOらは、今後の12カ月で従来の広告チャネルへの支出を5.3%減らすと見積もっている。

 企業はSNSへの投資から、かつてなく多くのリターンを得ていることが調査で示された。自己報告によると、全社的な業績に対するSNSの貢献度は2020年2月以降、24%増と急激に高まっている。これは重要な発見だ。なぜなら、SNSへの投資は着実に増えているものの、その成果は2016年以降ほぼ横ばいが続いてきたからである。

 CMOらは、2021年のマーケティング予算に占めるSNS投資の割合を23.4%と高水準が続くことを見込んでいる。これに伴い、彼らはオンラインの顧客体験への投資も増やしている。「顧客対応型のデジタルインターフェースに経営資源をシフトした」と答えたCMOは60.8%、「デジタル機会に注力すべく、自社の市場開拓型ビジネスモデルを変える」ことを計画しているCMOは56.2%に上った。

 消費者をデジタルの製品・サービスへと向かわせるうえで、SNSが引き続き重要な役割を果たしていくことは明白である。

 マーケティング部門のリーダーはどうすれば、この傾向の高まりを足掛かりにして、コロナ後も同じように有望なSNSマーケティングの戦略を策定できるだろうか。以下に10のポイントを推奨したい。

(1)正式な実験を行う

 CMOへの今回の特別調査では、コロナ期間中に即興的なマーケティングが行われた傾向が強く見られ、7段階中で平均5.6に上った(1は「まったく当てはまらない」、7は「とても当てはまる」)。

 しかし同時に、SNSプラットフォームで正式な実験をする回数が減っているという結果も示された。コロナ期間中に自社のマーケティング施策の成果を知るための実験を行った、と答えたマーケターは31%のみ。調査と実験のケイパビリティを構築するために経営資源を投じた、と答えた人は29%にとどまった。

 これらの統計データからわかるのは、マーケターは新規かつ即興的な戦略を頻繁に取り入れているものの、その効果を十分に理解していないということだ。2021年には、この傾向を改める必要がある。

 新たなブランドメッセージや広告、製品やサービスを試験的に投入し、ターゲットの消費者から直接、測定可能な反応を得る――その格好の機会をSNSプラットフォームは提供してくれるのだ。マーケターはこれらのツールを使い、学ばなくてはならない。

(2)既存のプラットフォームで新たなチャネルと機能を試してみる

 SNS戦略の担当者は常に、既存のプラットフォームに関する最新情報に注意しておくべきだ。たとえば、昨年夏にリリースされたインスタグラムのリールは、インターネットを席巻したショートムービー型のコンテンツを発信できる新たなチャネルとなった。同じく昨年初夏にリリースされたフェイスブックのギフトカードビジネス向けTikTok(ティックトック)も同様の例である。

 こうした新たなツールは、消費者と特別なつながりを築くチャンスをもたらす。彼らは新機能を見つける際、「その機能を真っ先に活用したブランド」と自分の発見を関連付けるからだ。新しい機能とチャネルを見つけ、それらに向けたコンテンツを迅速に作成するプロセスを備えてこそ、優れたSNSマーケティング戦略となる。