競争と協調のジレンマ
およびその解決法

 ライバル企業といたずらに競争するだけでなく、お互いに得となるような協力関係を築く──。アダム・ブランデンバーガー氏(ニューヨーク大学)とバリー・ネイルバフ氏(イェール大学)による論考「競争と協調のコーペティション経営を実践する法[注1]は、ライバル同士が協力するメリットを訴え、またその際の注意点も挙げており、一考に値する。

 ただし欧米の法律上、そして日本でも「ライバル同士の協力」は違法行為とされるケースが多く、日本企業が処罰され経営陣が逮捕、投獄される例も増えている。これが協調戦略を進めるうえでの1つ目のジレンマだ。違法行為を積極的に学びたい読者は少ないだろうし、筆者としても「経済学者のアドバイスに従ったら逮捕された」というクレームは聞きたくない。そこで本稿の前半では合法的な協調の可能性を探りたい。

 2つ目のジレンマは、協力相手がやがて強力な競争相手になってしまうリスクだ。両氏があまり触れなかったイノベーション(技術革新)や中長期的な企業の盛衰についても、後半で論じる。