コーペティションが
戦略にもたらす問い
いまからおよそ50年前に実現した人類初の月面着陸は、米国と旧ソ連による熾烈な競争の末に成しえた偉業として記憶されている。ところが実際には、宇宙探査は米ソの協調体制の下で始動する一歩手前まで進んでいた。
ジョン F. ケネディ大統領は1961年、ソ連の最高指導者ニキータ・フルシチョフとの会談で合同ミッションを提案し、63年の国際連合での演説でも同じ提案を繰り返した。これは実現しなかったが、東西冷戦のライバルは75年にアポロ号とソユーズ号の連携に着手した。98年には国際宇宙ステーションの共同開発により、コラボレーションの時代が幕を開けていた。
いまでは多数の国々が月面での存在感を高めようとし、またしてもチームを組むことが求められている。激しい競争関係にあるジェフ・ベゾスとイーロン・マスクでさえも、それぞれが主導する宇宙ベンチャー、ブルーオリジンとスペースXの統合に向けて、一度は対面したほどだ。