積極的な聞き手になる
ありのままの自分を見せることは、職場で有意義な人間関係を築くための基本だが、それには時間と意志が欠かせない。
ここで最も役に立つツールが「傾聴」だ。私は、初めて会った相手と話をして、よい付き合いができそうだと感じたら、相手が何に情熱を注ぎ、どこで働き、何を苦手だと感じているかといった大事なポイントに注意を払い、詳しく聞くようにしている。
そして、フォローアップする。
たとえば、その人との会話を思い出すような記事を見つけたら、その記事を送る。相手にとって価値がありそうなイベントを主催する時には、そのイベントに招待する。紹介したいと思う人がいれば、その人を紹介する。相手に薦められたレストランに行ったなら、仕事の電話をする際に必ずフォローアップして、フムスやプッタネスカのパスタが美味しかったなどと伝えることにしている。
積極的な聞き手(アクティブリスナー)になることは、深く付き合いたい相手かどうかを短時間で判断する助けにもなる。
つまりは、優れた聞き手になるだけでなく、「どう役に立てるか」を考えることが大事なのだ。たとえ相手から何かを得る必要がなくても、自分の提案やアイデア、人脈を惜しみなく差し出すことは、人との結びつきを築くための最もパワフルな方法の一つである。
そうは言っても、自分を消耗させるのではなく、力が湧き出るような方法で役に立つこと。過度に時間を取られることはしない。3分間で誰かを紹介するのは大した手間ではないが、相手へのインパクトは大きい。そして助ける相手は、自分を利用したり、やっかいな立場に置いたりするおそれのある人ではなく、自分が心から尊敬する人に絞ろう。
誰とでもつながる必要はない
本当の自分で仕事をするということは、相手に隙を見せることになる。だが、全員にあなたのそうした側面を見る資格があるわけでもなければ、その必要があるわけでもない。当然、あなた自身も出会った人すべてを助ける義務はない。
境界線を引くことは、いくつの理由から重要である。自分の時間を確保するため、燃え尽き症候群に陥るのを防ぐため、背信から身を守るため、そして喜びを得られる人間関係に重きを置くためだ。
まず覚えておきたいのは、出会った瞬間に、誰彼構わず、自分の人生について語ることが目標ではないということだ。この人だと思った相手と有意義な関係を築けばよい。
誰が信用できる相手かどうか、自分の勘を信じよう。あなたのことばかり聞きたがって自分のことは何も明かさない人、あるいは自分ばかり話したがって人の話を聞こうとしない人には注意しなくてはならない。
人間関係は、相互関係であるべきだ。まずは、仕事関係で結びつきを深めたいと思う相手を数人選び、一緒にお茶を飲んだりオンライン飲み会に誘ったりしよう。もしあなたが心から楽しめないのであれば、その人との付き合いに時間を費やす価値はない。
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私は、こうした深い結びつきを中心に人間関係を構築する機会を設けることで、仕事生活と個人的生活を融合させてきた。そこには、燃え尽き症候群も過度のプレッシャーも不安もない。
きっと、あなたにもできるはずだ。あなたには、自分自身のコミュニティを創出するパワーがある。まずは簡単なこと、つまり「自分の顔」を見せることから始めよう。
HBR.org原文:How Much of Your "Authentic Self" Should You Really Bring to Work? February 12, 2021.