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米国はこれまで、フィンテック・イノベーションを牽引し続けてきた。しかし、そのリーダー的地位は、アフリカ諸国の台頭によって脅かされつつある。なかでも目を見張る発展を遂げているのが、ケニアだ。携帯電話を基盤としたモバイルバンキング・サービスが急速に普及し、いまや金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)の模範的存在となっている。米国は、そして世界の企業は、ケニアの成功から何を学ぶべきか。
米国は60年以上にわたり、世界の金融技術(フィンテック)を牽引するイノベーターであった。しかし、この10年で世界のリーダーとなったのは中国だ。スマートフォンとSNSアプリに後押しされ、中国はリモート決済と金銭管理のデジタル化を活用し、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)のための安定的手段を確立してきた。
しかし、そのリーダー的地位も長くは続かないかもしれない。近年、ナイジェリアやケニアといったアフリカの国々がフィンテックの成長拠点として台頭し、安価で容易に使えるテクノロジーを活用して、かつてない形で消費者を動かしているのだ。
米国の銀行とフィンテック企業が競争力を保つには、海外でのこうした成功をもたらしている要因を学び、後れずについていく方法を見出す必要がある。
フィンテックを単純に定義すれば、金融分野における消費者と企業のニーズを解決するための技術活用とイノベーションだ。クレジットカード、オンラインバンキング、ブロックチェーンによる暗号通貨などを考えればよい。
何千年も続いてきた信用取引、契約、銀行取引を単に最新の形にアップデートするものとも言えるが、フィンテックは過去10年で最も劇的に成長した分野の一つだ。
ベンチャーキャピタリスト、伝統的な金融機関、政府、そして一般のスマートフォンユーザーまでが、それぞれフィンテックの急成長に一役買ってきた。リモート決済、アプリでの株取引、保険金請求の自動化といった技術が発展し、当たり前のものとなった。IMF(国際通貨基金)が引用した推計によれば、2010年代前半にはフィンテック分野に500億ドルが投資され、前年比3桁成長が常態化した。
しかし、現代フィンテックの発展は、数十年よりもっと前の過去に遡る。大きなイノベーションの波が3度あり、それぞれが特定時期の主要地域を中心に生じている。
この分野で最初の大波を生んだのは米国だが、企業と消費者にとって「これで必要十分」というレベルに達したところでイノベーションが停滞し、後れを取るようになった。しかし、フィンテックがどの道を辿ったのか、そしてどこに向かうのかを学べば、米国企業はまだ追いつくことができる。