一般的に、運転資本の圧縮は、売上債権の回収日数の短縮や、買入債務支払い日数の長期化によりもたらされる。これを行うためには、営業部門と顧客、そして調達部門のサプライヤーとの交渉が主なレバーとなる。

 マッキンゼーの過去のプロジェクト経験に基づくと、そもそも支払いサイトに関わる交渉がされていなかったり、交渉スキルに優劣があったりと、営業員ごとに運転資本に対する貢献には大きな差が生まれている。

 実際には、販売先や仕入先の支払いポリシーやキャッシュ保有の状況は各社さまざまであり、価格交渉と比較して取引先にも許容されやすく、営業や調達の担当者が必ず一定の交渉を行うことを徹底するだけでも大きな効果が得られる。

 こういった取り組みを行うことで、平均的には売上債権の支払いサイトの短縮により2~6%、買入債務の支払いサイトの長期化で1~3%の運転資本のベースライン額(売上債権+棚卸資産+買入債務)に対する改善が可能であり[注]、より多くの現金を社内に確保し運転資本を改善させられる余地がある。

 一方で、棚卸資産の圧縮による運転資金の改善は、在庫の削減とだけで捉えられがちだが、実際に可能な業務上の改善レバーはより複雑で、その実現のためには、R&Dから営業まで複数の部門が協力することが必要になる。

 例えば、マッキンゼーが日本で経験した製造業における運転資本圧縮プロジェクトでは、少量生産品を受注生産に切り替えることや生産終了品の在庫の保有期間短縮など顧客に対するサービスレベルを最適化することで、平均1~3%の効果が得られた。

 ほかにも、安全在庫水準を調整するなど製販計画改善では1~5%、部材の共通化等、製品設計面における施策で0~1%、売上債権や買入債務の回収のオペレーションおよび生産や物流等のオペレーション改善でも1~3%の効果が得られた。

 上図に示すように、こういった運転資本改善活動を、部門横断で体系的な取り組みとして実施することで、5~15%の運転資本の圧縮が期待できる。