運転資本の圧縮は、新型コロナ危機において特に注目を集め、経済危機下におけるキャッシュマネジメントについては追加で取り組むべき内容も明らかになった。

 ●売上債権

 コロナ危機により顧客が財政的に苦しくなったことで支払い遅延が発生し、平常時にはほとんど問題視されることがなかった過度に寛大な支払い条件が、貸倒れによる自社の経営リスクに直結する状況が発生した。

 企業は、データ分析を行って、顧客の支払い実績や自社の財政状態に加えて、顧客に対する支払いサイトや貸倒れの可能性を見える化し、売上の回収機能を強化する必要がある。

 こういった分析は、自動化ツールを用いて行うことが可能である。自社の現金バランスをリアルタイムでトラックし、流入と流出の状況を容易に可視化する。さらには、支払い遅延の期間や支払いサイトのばらつきを顧客レベルで可視化し、問題のある顧客を迅速に特定できる。

 ●買入債務

 コロナ危機に起因するサプライチェーンの分断や、サプライヤーの手元流動性が悪化する問題が発生した。そのため、より高いキャッシュポジションを持つ企業ほど、サプライヤーに有利な支払い条件を提示することで、サプライヤーとの関係を強化できるケースもあった。

 サプライヤーの手元流動性が悪化した場合に備えて、一時的により有利な(早期)支払い条件を提示するための標準的な検討プロセスを整えることも重要である。こういった例外的な緊急対応については、CFOあるいはCPO(調達責任者)が特別承認をするプロセスを設けることで規律を保つことが求められる。

 ●棚卸資産(在庫)

 コロナ危機によって、急速に変化し続ける環境に対応する在庫管理が求められている。グローバルなサプライチェーンの混乱により、一部の製品や部品が在庫切れになる一方で、嗜好品など特定の製品の需要は急減し、過剰在庫が発生した。

 企業は、ブロックチェーンやIoTなどの最新技術を活用して需要を短いサイクルで予測し、在庫の動きをリアルタイムで追跡することで、課題を迅速に特定して在庫を最適化できる。販売の機会損失を減らすと同時に、在庫過多による運転資金の増加を抑制することが可能になる。

 また、平常時から支払いサイトを適正に管理しているキャッシュポジションが強い企業は、危機下においては買掛金の支払いを早期化することにより、サプライヤーとの関係を深めることができる。さらに、コラボレーションと情報共有を円滑化することで、仕入れ状況と社内の予測精度を高め、在庫について正確な計画を立てることができる。

 運転資本の改善に関して、平常時から体系的な取り組みを行うことで、長期的に運転資本を最小化して事業運営を行える文化を社内に根付かせていくことができる。

 特に経済危機を経験しつつあるいまこそ、リーダーには短期的な資金確保のみならず、長期的なキャッシュエクセレンスの能力を組織に植え付け、競争力を高めることが求められている。