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ジェンダー平等を実現するうえで、男女間の給与格差を解消することは不可欠だ。実際、男女間の平均給与を比較すると、かなりの開きが見られる企業は多いだろう。ただし、その原因が性別による給与差別だとは限らない。給与が高い高位のポジションを男性が占めていることが、男女間の給与格差につながっている可能性もある。本稿では、筆者らが開発した分析フレームワークにもとづき、ジェンダー不平等を引き起こす真因を突き止める方法を紹介する。


 米国とインドを中心におよそ2万2000人のソフトウェアエンジニアを雇用している多国籍企業が、ある問題に直面していた。この会社では、女性社員の平均給与が男性社員よりも33%低かったのだ。つまり、男性社員が1ドル受け取っているのに対し、女性社員は0.67ドルしか受け取っていない計算になる。

 しかし、同等の役職、スキル、在職年数の男女を比較すると、格差は3%まで縮小した。統計上有意な差が存在することに変わりはないが、実際上の問題は33%の差とは比較にならないほど小さい。

 この会社は、社員を平等に扱い、公平に給与を支払いたいという考え方の下、社内の公平性の分析に乗り出していた。その目的を達するために、男性社員と女性社員が受け取っている給与の格差を調査したあとは、自社の組織図を詳しく調べてみた。

 すると、予想通りの現実が明らかになった。給与の高い役職では、給与の低い役職に比べて女性社員がはるかに少なかったのだ。しかし、筆者らの力を借りてさらに掘り下げて分析すると、単に女性を高い地位に就けるだけでは、給与の格差が埋まらないとわかった。

 このような状況に置かれているのは、この会社だけではない。筆者らはコンサルタントとして、企業がデータドリブンのピープルマネジメントを実践する手助けをしてきた。その経験を通じて知り合った企業幹部たちの中には、自社のジェンダー平等の達成状況に懸念を抱いている人たちもいた。

 そうした企業幹部たちは、自社の現状に問題があると感じているものの、どのようなデータを測定すればよいか、そして問題を解決するためにどこから手をつければよいか見当がつかずにいるケースも見られた。

 このような企業幹部たちを手助けするために、筆者らはある分析フレームワークを用いている。それぞれの会社の社内データに基づいて、平等の6つの側面――それぞれ独立した要素だが、相互に関連している――を把握することを目指すものだ。

 ここではジェンダーの平等に関する状況をあぶり出すことを目的にしているが、筆者らのフレームワークは、人種や民族などほかの側面での平等の度合いを明らかにする目的でも活用できる。

 このフレームワークでは、まず男女の給与の金額、続いて男女の登用状況(具体的には、採用、昇進、退職の状況を調べる)、そして最後に仕事に対する満足度を検討する。このような方法を用いることにより、給与格差が生まれる根本的な原因を明らかにできる。これまで行われてきたような給与の分析だけでは、その点は見えてこない。

 本稿では、この方法論による分析をどのように進めるべきかを説明したい。