Illustration by Lars Leetaru

女性が上級職として活躍する企業は、男女平等の実現という観点から優れているだけでなく、ビジネス上のさまざまな恩恵を受けられることが研究で証明されている。しかし、そのメカニズムは明らかにされてこなかった。筆者らが163の多国籍企業を対象に13年にわたる調査を実施したところ、女性が最高経営幹部に加わることで、企業の戦略的思考に3つの変化をもたらすことが明らかになった。


 上級職に女性が多い企業は、より収益性が高く社会的責任を果たし安全で質の高い顧客体験を提供できるなど、多くの恩恵があることが研究からわかっている。トップマネジメントチームのダイバーシティを高めることは、言うまでもなく、明らかに道徳的な議論でもある。

 なぜ女性エグゼクティブが増えるとビジネスの成果が向上するのか、そうした前向きの変化がどのようなメカニズムで起こるのか。これらを具体的に説明しようとすると、従来の研究では限界がある。

 こうした疑問を探求するために筆者らは、企業が女性エグゼクティブを選任した後に、イノベーションの戦略的アプローチがどのように変わったかを詳細に検証しようと考えた。13年間にわたり163の多国籍企業について、男女のエグゼクティブの人事を追跡し、R&D費、M&Aの比率、株主への手紙の内容を分析して、女性がトップマネジメントチームに加わった後に、長期戦略がどのように変化したかを調べた。

 いずれの企業も調査期間のあいだ、欧州市場のリーダーとして、戦略的なイノベーション(技術的なM&Aや社内のR&Dなど)を積極的に行っていた。ただし、そのアプローチは大きく変化した。

 具体的には、女性エグゼクティブの選任に伴う企業の戦略的思考の変化について、以下のように3つの異なる傾向がわかった。