Justin Paget/Getty Images

体調が悪くても、この程度なら大丈夫だと、無理して働くことが当たり前になってはいないだろうか。自分がいないと仕事が回らない、あるいは同僚に迷惑をかけてしまうと、休むこと自体を後ろめたく感じているかもしれない。特に働く親の場合には、病気休暇は子どもが体調を崩した時のために残しておきたいと考えがちだ。しかし、たとえ気が進まなくても、体調の悪い時にはしっかりと自分をケアする必要がある。本稿では、筆者の働く父親兼マネジャーとしての経験から、健康回復に必要な時間を取るべき正当な理由を整理し、必要な時に休みを取るためのアドバイスを贈る。


「ママとパパに病気休暇はない」というフレーズを、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。つまり、親は自分のことだけでなく、子どものことでも対処すべきことが多すぎて、休暇など取ってはいられない。それも、ずっとだ。

 だが現実には、たとえ気が進まなくても、働く親は必要な時に休みを取り、自分自身をケアする必要がある。

 これは、私が長年の間に身をもって学んだ教訓だ。働く父親兼マネジャーとして、私はかつて病気休暇を取ることにためらいがあった。コロナ禍以前は、微熱があっても、咳がひどくても出勤したことが、数え切れないくらいあった。いまは少し分別がついたとはいえ、病気休暇を取る時は、いまだに少し後ろめたい。そして、それは私だけではない。

 米国の労働者2800人を対象とした2019年の調査によれば、従業員の90%は体調が悪くても、しばしば、または常に出勤すると回答した。2017年の別の調査では、フルタイムで働く従業員の5人に1人が前年にまったく病気休暇を取得せず(その割合は年齢が上がるほど増す)、60%近くは取得日数が5日未満だった。

 コロナ禍は、手を洗う、マスクをする、具合が悪い時は家で休むという、他者を守り、自分の健康を管理するための基本を教えてくれたかもしれない。それでも、一般的な鼻風邪やのどの痛み程度では、いつも通りに仕事をしたくなる。

 体調が悪くても働いてしまうのには、いくつかの理由がある。従業員は、自分が休むことで同僚の仕事が増え、迷惑をかけると考えているという調査報告がある。自分がいないと会社が回らないと、心配する人もいる。会社がわざと休暇を取りにくくしていると感じる人もいる。また、復帰した時に待っている「山のような仕事」も恐ろしい。

 臨時雇いやパートタイムの従業員は、他の有給休暇はもとより、病気休暇をまったく取れないケースもある。体調の悪い子どものケアをするために病気休暇を使っている場合(米国の一部の州で可能)、病気休暇を自分のために使う気になれないのはもっともなことだ。

 それでも働く親には、健康を取り戻し、自分をケアする時間を取るべき正当な理由がある。

・病原菌の蔓延を防ぎ、家庭や職場で周囲の人の健康を守る。

・回復に必要な時間を取れば、体調の悪い期間が短くなり、早く復帰できる。

・家族はあなたを頼りにしている。平日に無理をして、土曜にダウンしたら、ハイキングに行く、行楽地に出かける、ほかにも皆で楽しむ家族行事の機会を逃してしまう。

・自分のための時間を取ることで、職場でも家庭でも、あなたの優先順位を伝え、行動のモデルを示すことができる。子どもにも将来、自分自身の健康に気を配り、健全な環境で働く大人になってほしいと望むなら、あなた自身の健康を優先させることで、そうするのがよいことだと示せる。

・最後に、「体調が悪い」とは、熱や寒気、胃けいれん、片頭痛で寝込むことだけを意味するのではない。メンタルヘルスのための休養も、同じくらい大切だ。メンタルヘルスにきちんと対処すれば、パートナーや子どもと向き合うエネルギーが回復し、家庭生活にとても大きな効果がある。