
自分自身を客観的に見つめ直すコーチングは、リーダーにとって欠かせない。だが、似通った立場のリーダーが集まるピアコーチングは、個別コーチングを補い、それとは別の大きなインパクトを与えてくれることは見過ごされがちだ。はたして、互いに何の責任も接点もないリーダー同士のコーチングには、どのような利点があるのか。さらにピアコーチングを相互学習の場にするために、メンバーは何にコミットすべきか。長年にわたってシニアリーダーにコーチングを行ってきた筆者らが解説する。
エグゼクティブコーチと1対1で個別にコーチングを受けるか、似た立場の人々とのピアグループでコーチングを受けるか、2つの選択肢が与えられると、ほとんどのエグゼクティブは前者を選択する。
もちろんそれは、仲間同士の対話に頼るよりも、経験豊富なコーチに自分だけに注意を向けてもらうほうが自己成長できるという考えからである。そのほうが、コーチにはあなた自身のことをよく知ってもらい、みずからの成長に何が必要かを理解し、そして自分だけに集中してもらえる。どう考えても、グループコーチングより効果的だと考えるのだろう。
だがその論拠は、少人数で行うグループコーチングの重要な利点を見過ごしている。筆者らが実施しているリーダーシッププログラムの参加者は、グループコーチングの経験は予想以上に価値があったと感想を残してくれることが多い。その利点は、1対1のコーチングとは別物であり、それを補完するものだ。
スモール・グループコーチングの利点は、リーダー間の強力な相互学習によるものだ。メンバーは、同じチームに属していないが、経験や立場が似通ったリーダーたちである。仕事上、互いに何の責任も接点もない人々を一緒にすることで、他の方法では経験できないディープラーニングが可能になる。