
気候変動問題に対する世間の関心は、ますます高まっている。投資判断を下す際、企業の業績だけでなく、企業活動が気候変動リスクにどのような影響を与えているかを考慮する株主もいる。気候変動リスクの開示を求める株主提案は増えているが、情報開示は実際に進んでいるのか。また、市場にインパクトを与えているのだろうか。
株主が企業に対して、気候変動リスクに関する情報の開示をより声高に要求するようになってきた。2019年5月にBPの株主が圧倒的多数で情報開示に賛成し、同じような提案がエクソンモービル、オキシデンタル・ペトロリアム、PPLコーポレーションの株主にも受け入れられた。
2021年にはこのような提案の数が過去最高になる、と議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は予想している。ただ、株主提案の頻度が高くなっているにもかかわらず、年次総会で支持を得るにはいたっていない。
個々の企業に関するニュースが時折流れるケースを除けば、この種の株主からの圧力をきっかけに、企業が気候変動リスクに与える影響が実際に開示されるようになっているのかは、ほとんどわかっていない。株主提案はよい結果をもたらしているのだろうか。そして、市場に対するインパクトはあるのだろうか。
それを解明するために、筆者らはアクティビズムが2010年から2016年にかけてS&P 500社に与えた効果を研究し、CDP(前身はカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が所有するデータセットを分析した。このデータセットは、気候変動がもたらすリスクと機会、それらに対処する戦略、その他の環境関連情報の開示を上場企業大手に依頼してつくられたものである。
筆者らはさらに、S&P 1500社に提出された株主提案の情報を集めたISSのデータベースも分析した(当該の研究は『ストラテジック・マネジメント・ジャーナル』誌で確認できる)。
筆者らの分析によると、株主アクティビスム――提出された環境関連の株主提案の数をもとに測定――は、企業が気候変動リスクを自主的に開示することを促している。気候変動リスクの開示は、株主から環境関連の提案が1つあるごとに平均で約4.6%上昇した。また、環境に関する株主アクティビスムは、長期保有を前提とする機関投資家が主導すると、いっそう効果的であることもわかった。その効果が4.6%から6.8%へと上昇するのだ。
株式市場がそのような情報の開示に対して、ポジティブに反応することも立証できた。株主からの要求で気候変動リスクの情報が開示された数日後、その企業の株価は平均で(市場調整ベース)1.21%上昇した。
すなわち、投資家は気候変動リスクに関する高い透明性を評価し、企業にとって情報開示が利点になることを示唆している。別の表現をすれば、投資家は不確実性を嫌い、透明性のより高い会社には進んでプレミアムを払うのだ。