●マスクの場合はどうか

 マスクは必ずしも「正装」のカテゴリーに分類されるわけではないが、現在は従業員服装規定の一部となっていることが多く、買い物客のアプローチの意向に大きく影響している可能性がある。

 コロナ禍から1年強が経過した段階で、調査対象者の83%が同じ従業員であれば、マスクを着用していない従業員ではなく、マスクを着用しているほうに声をかけると回答した。この結果は、マスクの継続着用が従業員への信頼と購買体験の満足度を高める可能性があることを示唆している。

 マスクには、従業員と買い物客の間のコミュニケーションに使われる「表情」を制限するという別の問題がある。従業員は、接客意向を笑顔で伝えることができないため、服装というシグナルの発信がより重要になる。

 ●社会的距離を保つために服装を選ぶ

 パンデミックの性質が急速に変化しているため、ワクチンの供給が進み、新たな情報が発見されながらも、多くの人々が社会的プロトコルの不確実性を感じている。州の規制が地元自治体の規制と異なる場合があり、さらに小売店が独自の規則を定めている場合もある。これらの規制も、社会的距離やマスク着用の推奨と同様、コロナ禍の最中に変更されてきた。

 個人の考え方も、買い物時のルールやマナーに関する迷いを助長していることが多い。こうした混乱によって、従業員と買い物客の多くが店舗内でどのように接触するのがよいのかわからないまま取り残されている。

 コロナ禍がもたらした混乱は、従業員の服装規定に柔軟性を持たせ、買い物客にどの従業員に声をかけてほしいかを伝えられるようにすることで緩和できる。同時に、買い物客は、最前線に立つ従業員の誰もが現時点で安心して接客できると感じているわけではないことを肝に銘じ、接客に積極的な店員を示すサインを探すことが必要だ。

 最後に、この1年間で社会的プロトコルが大きく変化したことを踏まえ、私たち全員が安全にコミュニケーションするための新たな方法を学び、このコロナ禍をともに乗り切っていきたい。


"What Retail Workers' Attire Communicates to Customers," HBR.org, May 03, 2021.