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米国では、黒人女性が起業する割合が、白人女性や白人男性のそれを上回っている。にもかかわらず、長期的に維持し、成熟した事業に達している比率となると、その数字は極めて小さくなる。これらの事実には、起業家エコシステムがもたらす格差とバイアスが隠されていると、筆者らは指摘する。黒人女性が起業するのは利幅の薄い分野であることが多く、資本へのアクセスが限定的であることから、起業しても利益を生み出せない悪循環に陥っているというのだ。本稿では、これらの問題に対処するために、政府機関と民間部門がいますぐ着手すべき措置について論じる。


 米国では驚異的なことに、黒人女性の17%が新たに事業を始めようとしている、あるいはすでに事業を運営している。これに対して、白人女性では10%、白人男性の場合は15%だ。

 ところが、起業段階ではこのようにリードしているにもかかわらず、成熟した事業を運営している黒人女性は3%にすぎない。

 なぜこのような落差が生じるのか、どうすればその問題を解決できるかを明らかにするために、筆者らは1万2000人以上を対象にしたインタビュー調査の結果を分析した。このうち約1700人が起業家として分類され、約1200人は確立された事業を運営している。

 この調査は、「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター」(GEM)の一環として行われた。GEMは起業に関するデータや特性をまとめた年次調査で、1999年以降、世界120カ国以上で行われている。この大規模調査は各国の学術研究チームによって実施され、筆者らは米国チームのメンバーである。

 筆者らの研究から、黒人女性起業家が事業を維持するのに苦労している理由として、複数の要因が考えられる。

 一つの理由は、事業の種類にあるのかもしれない。筆者らがデータを分析したところ、黒人女性起業家が立ち上げた事業の61%は、小売業/卸売業または保健/教育/行政/社会サービス分野だった。これに対して、白人女性ではその割合は47%、白人男性の場合は32%だ。これらの分野は競争が激しく、利幅の薄い小規模事業であることが多いため、長期的に事業を維持するのは難しい。

 にもかかわらず、これらの分野で事業を始める黒人女性起業家が多いことの理由として考えられるのは、資本へのアクセスだ。

 筆者らのこれまでの研究で、黒人女性の61%は開業資金をすべて自分でまかなっていることが明らかになっている。GEMのデータを分析したところでは、世帯収入が7万5000ドルを超える黒人女性起業家は29%しかいないにもかかわらず、だ。これに対して、白人男性の場合は52%に上る。

 この結果と、黒人は大学進学のために借金をする割合が高く、住宅の所有率は低いという事実を合わせて考えると、高学歴の黒人女性は大きな債務を抱えているうえに個人的なリソースは少なく、担保となる財産も乏しいことが伺われる。

 さらに米国社会では、起業に必要な重要リソースへのアクセスが平等に分配されていないため、特定グループの優位が強化され、不利な立場にあるグループが新たに参入したり、遅れを取り戻したりすることが妨げられている。これでは、リソースが限られていて、起業しても利益を生み出せないという悪循環を強化しているにすぎない。