
自社の営業プロセスを自動化し、生産性の向上や顧客満足度の改善を目指す企業は増えてきた。しかし、その明暗は大きく分かれている。セールスオートメーションに成功する企業と失敗する企業は何が違うのか。本稿では、自動化のメリットを明らかにしたうえで、セールスオートメーション戦略を効果的に策定・実行するための5つの原則を明らかにする。
あるグローバルな家電メーカーは、収益性を高める必要に迫られて、コストの最適化、セールスの生産性向上、顧客満足度の改善を軸に、自社の事業のあり方を抜本的に見直すことにした。
これらの目標を達成するために行ったのは、顧客と商品に関するマスターデータの管理、トラブルや苦情の処理、在庫の補充、そして値引き販売の管理を自動化することだった。また、この会社は、ウェブクローラー・ツール(ウェブ上の文書や画像や動画を自動的に収集し、データベース化するプログラム)を導入して、競合に差をつけるための情報収集を強化した。リーダー層の旗振りの下、同社はわずか3年で、こうした自動化の対象になったプロセスにかかるコストを15%削減することに成功した。
この家電メーカーが直面していたような状況は、今日のセールス組織では珍しくない。最近のマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、セールス関連の活動の30%以上は、自動化により効率性と有効性を高めることが可能だという。ところが、自動化の利点をよく理解していなかったり、トラッキング調査が不十分だったり、投資利益率(ROI)について懸念があったり、商品納入の遅れに関する難しい問題があったりするなど、導入に至らないケースが多い。
こうした障害を乗り越えて自動化に乗り出した企業も、自動化プロジェクトの目標を達成することにしばしば苦戦している。プロジェクトが成功していると回答している企業は50%にすぎない。
その一方で、他社に先駆けてセールスオートメーションを推進した企業は、目覚ましい成果を上げている。そのような企業は、5つの重要なテクノロジー――機械学習(ML)、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、自然言語処理(NLP)や自然言語生成(NLG)、スマートワークフロー、認識エージェント――を活用することで、コストを削減し、顧客サービスを改善して、事業を拡大させてきた。
本稿では、セールスオートメーションの幅広い恩恵について検討する。加えて、セールスオートメーションをどのように標準的なセールスプロセスに取り入れ、新しいプロセスをどのように導入してセールス能力を向上させればよいかも論じたい。また、セールスオートメーション戦略を策定・実行する際に頭に入れておくべき5つの重要な原則も紹介する。