
メンバーが世界各地に分散し、オンラインツールでコミュニケーションを取りながらプロジェクトを完遂させる光景は、もはや珍しいものではない。メンバーの多様性が優れた問題解決につながる一方で、グローバルバーチャルチームには多くの課題があるのも事実だ。時差、言語や文化に限らず、メンバーが暮らす国の経済条件や政治体制の違いが、チームのパフォーマンスに影響を与えるからだ。本稿では、メンバー間の相違を個人的多様性と文脈的多様性に分類して論じ、それらの恩恵を活かしつつ、課題に対処するための方法を提示する。
世界90カ国の従業員を対象にした最近の調査によれば、ホワイトカラーの89%が「少なくとも時々」、グローバルバーチャルチーム(GVT)でプロジェクトを行っているという。つまり、世界各地に分散したメンバーと、オンラインツールでコミュニケーションを取りながらプロジェクトを完遂させているのだ。
この結果は驚くべきことではない。グローバル化した世界で(社会的距離があることは言うまでもない)仕事を進めるには、オンラインコラボレーションが欠かせない。
だが、グローバルチームのバーチャルコラボレーションには多くの恩恵がある一方で、課題がないわけではない。時差、言語や文化、スキルレベルの違いはもちろん、メンバーのいる国の経済条件や政治体制の違いが、チームの協力方法や成果の上げ方に影響を与える可能性がある。
筆者らのチームは最近の研究で、こうしたリモートグローバルチームにおけるメンバー間の相違がパフォーマンスに与える、いくつかの影響を特定した。マネジャーがそのダイナミクスを理解すれば、チームメンバーは幸福度を高め、生産的にプロジェクトに取り組むことができるだろう。
地理的多様性の課題と恩恵
異文化間のコミュニケーションとコラボレーションに関する課題は、これまで多くの研究対象になってきた。
過去24年間に『ジャーナル・オブ・インターナショナル・ビジネス・スタディーズ』誌に掲載された研究論文1100件以上を精査した最近の研究では、その95%はチームメンバー間の相違がもたらすネガティブな影響に焦点を当てていた。同様に、年齢やジェンダー、人種の違いが、メンバー間の交流を複雑にすることが、多くの研究によって示されている。
しかし、メンバー間の相違は、チームのパフォーマンスに大きな恩恵をもたらす場合もある。均質性が低いチームのほうが、独創的な成果を上げることは多くの研究が示してきた。多様なチームは、より幅広い選択肢を検討し、より慎重に事実を分析し、集団思考の罠にはまる可能性が低く、最終的により優れた決定を下すのだ。
問題は、メンバーがさまざまな国に分散しているチームが、優れたパフォーマンスを示すのはいつで、苦労するのはいつかを見極めることだ。筆者らの研究では、地理的多様性の種類がチーム全体にどのような影響を与えるかを明らかにした。