
プライベートエクイティ(PE)投資は苦しい状況に置かれている。企業を買収して、別の企業を統合することで業績を改善し、売却するという従来の方法によるパフォーマンスが低下しているのだ。筆者らは、PEファンドが投資先企業から成るエコシステムを形成し、各社がポートフォリオ横断的に関係性を構築することで、単独では生み出せない新たな価値を創出できると主張する。
プライベートエクイティ(PE)投資の行く末には、困難が待ち受けている。
50年を経たこの市場の成熟とともに、投資リターンは減少している。実際、過去30年にわたり、バイアウトのパフォーマンス――バイアウトファームが企業を買収し、改善し、売却することで生み出す利益――の平均は減少傾向にある。
ハーバード・ビジネス・スクールのジョシュ・ラーナー教授、ステート・ストリート、ベイン・アンド・カンパニーによる調査を例に挙げれば、1999年時点での過去10年間の年率リターンと、2019年時点での同数値を比較すると、6%ポイントの有意な減少が見られた。
何がこの業界を苦しめているのだろうか。端的にいえば、PE投資で業績を上げるために使われてきた従来の手法は、効果が薄れているのだ。これは、成熟市場では自然な流れである。
第1に、レバレッジや価格裁定という財務手法が以前よりも奏功しにくく、コントロールが難しくなっている。アクティブなPEファーム(PE投資会社)の数は過去最多水準に達し、レバレッジによる利益は競争を通じて大幅に減っている。そして、PEファームが事業買収に投じる金額の平均は(対象事業の基礎利益と比べて相対的に)かつてなく増えているため、潜在的リターンも実質的に減っている。
第2に、マージンやグロースなどの運用上の手法を十分に活かすことが難しくなった。世界的な競争とコモディティ化によって、製品にプレミアム価格を付けにくくなり、それが利幅を縮小させている。そして、コスト削減という実現しやすい施策による利益は、以前の所有者により回収されている場合が多い。
小規模な買収をして既存事業に統合するという典型的なPE戦略は、売上高の成長やその他のメリットをもたらすが、この手法の普及に応じて買収額も上がり、必然的にリターンも減る。
成熟度と効率性を高める市場で利益が削り取られる中、PEファームは経営と財務の両面で、価値を創出するためにイノベーションを起こしてきた。経営のケイパビリティをアップデートし、金融工学の新形態を生み出した例として、グループ内の異なるレベル(投資先企業、ファンド、マネジャーのレベル)でのデットの導入などがある。とはいえ、こうした漸進的な取り組みは、業界利益の構造的な減少を食い止めるには十分ではない。
求められているのは、PEファームが価値を認識して創出する新たな方法だ。