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環境問題がますます深刻化する中、この問題の解決策の一つとして、リニアエコノミー(直線型経済)からサーキュラーエコノミー(循環型経済)の転換が提唱されている。こうした主張は魅力的であり、事実。産業界と政策当局の双方から熱烈に支持されている。ただし、その有効性と現実性に疑問を呈する論者も多い。本稿では、このアプローチの限界を正しく理解するために、サーキュラーエコノミーへの転換が困難な4つの理由を示す。


 世界は気候変動と生態系へのダメージに関して、後戻りできない転換点に近づいている。この点を裏付ける強力な証拠を前に、いまただちに解決策を打ち出し、対策に乗り出す必要がある。

 そうした解決策の一つとして提唱されているのが、いわゆるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換だ。この考え方は、産業界と政策当局の双方から熱烈に支持されている。

 サーキュラーエコノミーという考え方が注目を浴びるようになったのは、1980年代後半だ。ゼネラル・モーターズ(GM)の研究員たちが生産プロセスにおける「クローズドループ」のアプローチを提唱したのが始まりである。

 その後、2009年には、世界一周単独航海を成し遂げたことで有名なエレン・マッカーサーがエレン・マッカーサー財団を設立し、サーキュラーエコノミーの考え方を浸透させた。今日、同財団は、180ほどのそうそうたる顔ぶれのパートナーメンバー組織を擁している。また、世界の一部の地域、特に欧州連合(EU)の当局も、サーキュラーエコノミーの推進を積極的に推し進めている。

 サーキュラーエコノミーという考え方は、3つの重要な柱によって構成されている。それは、ゴミと汚染を減らすこと、製品や素材を長く用いること、そして、再生資源や再生可能エネルギーを使って自然のシステムを再生することである。

 産業界は、これまでのやり方を根本から改めて、製造・使用・廃棄という一方通行で進む既存の直線型(リニア)のモデルを脱却することを促されるようになった。それに代わって、より持続可能性の高いアプローチに転換し、耐久性の高い製品をつくり、製品を修理して使ったり、再生品を製造したり、再利用したりし、最終的にはリサイクルしたりすることを目指すべきものとされている。

 このような主張は魅力的なものに思える。サーキュラーエコノミーに向けた取り組みは労働集約的な性格が強く、資源の効率性を追求するため、雇用の創出と経済成長の促進につながると主張されているのだ。たとえば、EUでは、推定70万人の雇用創出効果と、国内総生産(GDP)の0.5%増加を予測している

 しかし、サーキュラーエコノミーへの批判がないわけではない。サーキュラーエコノミーが目指す目的は評価しつつも、この考え方の核を成す前提、そしてアプローチの有効性と現実性に疑問を呈する論者も多い。

 なかでも、リサイクルの実践、耐久性のある製品の開発、再生資源・再生可能エネルギーの活用、代替的なユーセージモデルの採用がどの程度可能かは定かでない。実務的・環境的な制約がついて回るうえに、人々が経済と生活水準に関して抱いている期待が高いことが理由だ。