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目の前に、誰も手をつけていないタスクがある。非常に重要で、極めて緊急を要するものだが、自分の職務の範囲を超えている。あなたはその時、みずからの手でタスクを完遂させるべきだろうか。問題は、リーダーであってもチームメンバーであっても、状況認識できないまま手を出すことで、かえって混沌や混乱を招いてしまうリスクだ。担当範囲を超えて仕事をすることが有益か有害かを検証するために、多数病傷者発生時の対応訓練に関する記録や観察を通じて検証を行ったところ、3つのポイントが明らかになったという。本稿では、ますます変動の著しい状況において、細心の注意を払いながらも迅速に判断を下すための基準について論じる。


 遂行されるべき重要な仕事が目の前にある時、自分の役割でなくても、それをやるべきだろうか。

 チームプレーヤーとして、可能な限り助け舟を出すのはよいことだから「もちろん」と言う人もいれば、やる気がないからではなく、人の仕事に手出しして非難される恐れから「否」と断じる人もいる。実際、「Stay in your lane」(「自分の車線から出るな」から転じて「出すぎた真似をするな」の意)という言い回しがあり、自分に割り当てられた仕事「だけ」をすべきだと説く際によく使われる。

 筆者らは自分の担当範囲を超えて仕事をすること、たとえばリーダーがメンバーのタスクを行ったり、逆にメンバーがリーダーのタスクを行ったりするように、自身の役割外のタスクを行うことが有益か有害かを明らかにするために、複数台の自動車事故や大量銃乱射事件など、多数病傷者発生時の対応訓練に参加したファーストレスポンダー(現場に最初に到着する緊急対応要員)の観察や記録を通じて、この現象について検証を行った。

 こうした訓練は、ファーストレスポンダーが準備や心構えをするためにも、極めて重要だ。誰もが、そこまで騒然とした複雑な環境下で仕事をしているわけではないが、長年にわたって混沌と格闘してきたこの領域に、ますます変動の著しい現在の状況に適用できる知見を求めるのは、有益だと考えられる。

 筆者らの調査の結果、職場で自分の役割外の仕事に手を出すべきかどうかは、以下の3つの点に留意して判断することが不可欠だとわかった。