
毎年6月はプライド月間として、LGBTQ+の権利やコミュニティへの支持を促すイベントが世界各地で開催される。企業もこれに合わせて、自社のロゴや商品を虹色に変えたり、連携を訴えるメッセージを発信したり、マーケティング活動に勤しむ。だが、レインボーキャピタリズムという言葉が示すように、企業がLGBTQ+を利用して大量消費主義を盛り上げようとしていることは、もはや消費者の目に明らかだ。筆者は企業に対して、プライドをテーマとした偽善的なマーケティングをやめ、LGBTQ+の置かれた状況を本当の意味で改善するための取り組みに切り替えることを勧める。本稿では問題の本質を論じ、企業が取り組むべき施策を提案する。
筆者が2021年の流行語大賞を予測するなら、それは「パフォーマティブ」(行為遂行的)になるだろう。
これは企業が社会的意識の高い取り組みを行うものの、それが偽善的、不誠実、あるいは的外れだと感じた時に使われる言葉である。DEI、すなわちダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)の実務家から思慮深い消費者まで、多くの人々が口にしている。
米国では、毎年6月を「プライド月間」と定めている。ソーシャルメディアのフィードは、性的少数者を象徴するレインボーカラーのロゴや、「ラブ・イズ・ラブ」(異性間でなくても愛は愛だ)のメッセージでいっぱいになる。レインボーに、非白人(POC)を意味する黒と茶のストライプを加えた「フィリープライド」のロゴも目立つ。
だが、こうしたメッセージも、数年前には革命的に感じられたかもしれないが、最近では支持を失っているようだ。しかも、こうしたブランディングの取り組みによって連帯を示そうとしているLGBTQ+コミュニティの当事者さえ、反応は鈍い。
LGBTQ+コミュニティメンバーの多くは、こうした「レインボーキャピタリズム」に辟易している。この言葉は、ロゴやメッセージという記号が、LGBTQ+の置かれた状況に有意義な改善をもたらすのではなく、大量消費主義を盛り上げるために企業に利用されている様を表している。
「ピンクウォッシング」を問題視する声もある。肯定的なイメージを強調することで、LGBTQ+が直面する人権侵害や他の不正義を曖昧にしたり、それらの問題から意識を逸らしたりしているというのだ。