
新型コロナウイルス・ワクチンの高い有効性が証明され、各国で接種が進む中、企業は難しい問題に頭を抱えている。従業員にワクチン接種を義務付けるべきかどうか、という問題だ。法的・倫理的にどこまで認められるのか、接種免除の基準をどう設けるのか、従業員とどのようなコミュニケーションを取るべきかなど、検討すべき項目は多い。本稿では、米国で初めて職員のワクチン接種を義務付けた大学病院ヒューストン・メソジストの事例から、自社でワクチンポリシーを導入する際の7つのステップを提示する。
従業員に新型コロナウイルス感染症(やその他の感染症)のワクチン接種を義務付けるべきか。この難しい問題に頭を悩ませている雇用主は、私たちヒューストン・メソジストが、どのようなプロセスを経てその決断を下したかが参考になるかもしれない。ヒューストン・メソジストは、米国のテキサス州ヒューストンで8つの病院を運営するアカデミック・メディカルセンター(大学病院)だ。
2021年3月31日、私たちは(一部の例外を認めつつも)2万6000人の職員にワクチン接種を義務付けることを決めた。これは、米国の医療機関としては初の決定だった。その後ほどなく、私たちの経営する病院で医療に携わる資格を持つ7500人の開業医にも、同様の義務を課すものとした。
義務化以前の時点で、ヒューストン・メソジストの職員の84%が新型コロナウイルス・ワクチンの接種を済ませていた。6月7日に義務化の措置が発効したあとは、正当な免除理由のある人を除いて、接種率は100%に達した。接種免除を認められたのは、職員285人と有資格の開業医108人。接種の先延ばしを認められた人は332人だった(合計で全体の2%に相当)。
この措置を導入したあと、ヒューストン・メソジストは117人の職員から裁判を起こされた。雇用の条件として予防接種を義務付けることはできない、というのが原告側の主張だった。しかし、連邦判事はただちにこの訴えを退けた。裁判官は、ワクチン接種が実験的なもので有害であるという原告側の主張を却下し、こう結論付けた。「この措置は、スタッフと患者、そしてその家族の安全を守るための選択と見なせる」
この裁判により、ワクチンポリシーの法的正当性が認められたことになる。したがってそのやり方は、独自のワクチンポリシーを確立したい他の雇用主が参考にできるものと言えるだろう。私たちは以下の7つのステップを経て、ワクチンポリシーを導入した。