
本連載「戦略としての企業価値」では、お金の流れによって経営を理解する「投資家」の思考と、事業によって企業価値を創造していく「事業家」の思考を併せ持つことがこれからのビジネスパーソンにとって必要であること、そしてどうすればこれらを体得できるのかを解説していく。
投資家と事業家の思考を併せ持つには、ファイナンスの概念や理論を共通言語として理解すること、さらに企業価値を創造する「成長」と「稼ぐ力」を軸とする戦略への理解を深めることが必須である。これは、経営者のみならず、年齢や職種を問わず求められていく。この初回では、本連載の総論を述べる。
本連載「戦略としての企業価値」では、お金の流れによって企業経営や事業の全体像を理解し、企業価値を創造する戦略を立て、企業価値を創造していくのに必要な思考とスキルについて説明していく。すなわち、お金の流れによって経営を俯瞰して理解する「投資家」の思考と、事業によって企業価値を創造していく「事業家」の思考を併せ持って実践していくためのヒントを提示していく。
このように言うと、「企業でビジネスを行っているのに、投資家であるべきとはどういうことか」といった疑問があるかもしれない。また、「事業家というのは、いわゆるスタートアップ企業やファミリー企業を経営している人たちのことだろう」という異論もあるかもしれない。
それでも、これからの日本企業の経営者は、投資家的な思考と事業家的な思考を併せ持って企業経営を実践していくべきなのである(図表1-1「経営者は投資家であり事業家でもある」を参照)。はじめに、その意図するところを説明していくことにしよう。
図表1-1 経営者は投資家であり事業家でもある
なお、この思考とスキルが必要なのは、経営者にとどまらない。志さえあれば、中堅社員、あるいは若手社員まで含む。また、経営企画や経理・財務に限らず、研究、営業、人事など職種を問うものでもない。さらには、大企業であるか、中堅・中小企業であるかといった企業規模や上場しているか否かを問うものでもない。