
サンクコスト効果は「コンコルドの誤謬」としても知られる。大企業の巨大プロジェクトや政府の軍事行動にも例が見られるように、過去にリソースを投資したもののすでに回収不可能であり、さらに投資を続けることは損失につながるにもかかわらず、投資を継続しようとする心理効果だ。どれだけ経験豊富なリーダーであっても、この落とし穴にはまって身動きが取れなくなることが少なくない。本稿では、サンクコスト効果の影響の受けやすさを測定する尺度を用いて、みずからの影響の受けやすさを把握することで、よりよい意思決定を行うための議論を提供する。
あなたは、本来なら途中で断念すべきプロジェクトを、いつまでも続けたことがないだろうか。取り返しがつかないところまで悪化した人間関係を、耐え忍んだことはないか。苦労して稼いだお金でチケットを買ったのだからと、憂鬱な天気の中、重い足を引きずってイベントに参加したことはないだろうか。
これらはいずれも「サンクコスト効果」(埋没費用効果)の例である。サンクコスト効果とは、過去にリソースを投資したもののすでに回収不可能であり、さらに投資を続けることは損失につながるにもかかわらず、何かを行ったり、継続したりする心理効果を指す。
この効果はよく知られているように、さまざまな状況で重大な判断を下す際に生じることが多い。たとえば、ゼネラル・モーターズ(GM)は、経営陣がかつて成功を収めた戦略に固執したことが、20世紀末の衰退につながったと言われている。
航空業界では、英仏政府が超音速旅客機コンコルドプロジェクトに巨額の投資を行ったのは、損失を取り戻すためにさらに資金を注ぎ込んだことが原因だと一般的に考えられている(実際、サンクコスト効果はいまも「コンコルドの誤謬」と呼ばれることがある)。
政治の世界でも、米国の軍事作戦がベトナムやイラクで長引いた事例が示唆するのは、サンクコスト効果によって経済的損失だけでなく、何万人もの命が犠牲になる可能性があることだ。
ビジネスエコノミクスや意思決定に関する講義では、「過去に埋没した回収不能なコストは、次の行動を決断するうえで重要ではない」のが基本的だ。意思決定者は、サンクコスト効果が戦略判断に影響を与える場合、実際に悲惨な結果を招く可能性があることを忘れてはならない。