第4回は、まずディスカウントキャッシュフロー(DCF)法による企業価値評価の基本を押さえたうえで、理論株価の算出や、企業価値評価に「正解がある」と考えてしまう誤解などについて解説する。次に、DCF法によって算出した企業価値の水準をチェックする際によく用いられるマルチプル法の基本に触れ、日本企業の公表数値を用いたケーススタディをもとに、DCF法とマルチプル法を実際にどのように活用していけばよいのかについて解説する。

企業価値の算出

 企業価値とは、企業が生み出すフリーキャッシュフローの現時点での価値(現在価値と呼ばれる)の総和である。企業価値を具体的に算出する際は、(1)将来のフリーキャッシュフローの予測、(2)継続価値(CV: Continuing Value)の算出、(3)加重平均資本コスト(WACC)の算出、(4)企業価値の算出の順に行う(図表4-1「企業価値のディスカウントキャッシュフロー(DCF)法による算出」を参照)。

図表4-1 企業価値のディスカウントキャッシュフロー(DCF)法による算出