
米国大統領選挙や新型コロナウイルス感染症のパンデミックが象徴するように、根拠のない主張や陰謀論が急速に拡散するようになり、社会に悪影響を及ぼしている。偽情報の問題はいまに始まったことではないが、ソーシャルメディアの普及で情報の拡散力が増したり、人工知能によってディープフェイクが登場したりするなど、テクノロジーの発達がこの問題を深刻化させていることは事実だ。ただし、技術進化に負の側面ばかりがあるわけではない。ブロックチェーンという新たなテクノロジーが、偽情報との戦いに勝利するうえで重要な役割を果たすことが期待されている。
偽情報――政治的・金銭的利益を目的として人々を誤解に陥らせることを意図して流される情報――は、けっして最近はじめて見られるようになったものではない。しかし、この1年間に目の当たりにしてきたように、デジタルプラットフォームの普及により、危険な陰謀論の類いを拡散させることが以前よりも極めて容易になった。
新型コロナウイルス感染症、人種差別に対する抗議活動、カリフォルニアで起きている山火事、2020年の米国大統領選挙の結果など、実にさまざまな問題に関して、明らかに誤っている主張が目を見張るほど急速に拡散し、非常に多くの人に信じられるようになっている。
問題をさらに深刻化させているのが、いわゆるディープフェイクの登場だ。ディープフェイクとは、人工知能(AI)によってつくり出された音声や画像や動画で、まったくの捏造であるにもかかわらず、非常に本物らしく感じられるもののことを言う。
これが企業に何千万ドルもの損失をもたらす可能性がある。しかも、弊害はそれだけではない。金額などの形で数値評価することは比較的難しいものの、テクノロジーを利用した偽情報が社会に及ぼす影響も軽く見るわけにはいかない。
それでも、好材料もある。テクノロジーによって問題に拍車が掛かったことは事実だが、新しいテクノロジー、とりわけブロックチェーン技術が偽情報の脅威と戦う手段になる可能性もある。
偽情報の問題は、非常に複雑な手ごわい問題だ。1つの手段だけで問題がすべて解決すると考えるのは、あまりに認識が甘い。しかし、最近の動向を見ると、ブロックチェーンに基づいたアプローチを実践すれば、デジタルテクノロジーを利用した偽情報がもたらすリスクと、そうした偽情報が生まれる根本原因の多くを是正できる可能性がある。