
ファミリービジネスと業績に関する研究はこれまでに数多く実施され、親族が所有する企業の業績は上がりやすいことが立証されている。しかし、親族による経営と業績との関係は明確ではない。本稿では、「家族に対する信頼」と「公的機関に対する信頼」という2つの尺度を用いて、親族経営が業績に与える影響を解き明かす。
世界全体で、ファミリービジネスは全企業の75%を占め、GDPの65%に貢献している。しかしながら、一族がその会社の業績を向上または低下させているのかについては、いまだに根拠がまちまちであり、激しく議論されている。
筆者らは先行研究の結果について理解を深めるために、30カ国の388万267社を対象に含む204件の学術研究について、メタ分析を実施した(トリーア大学のヨルン・ブロック、IUBH国際大学のドミニク・ワグナーも参加)。
ファミリービジネスは、親族がオーナー、経営者、またはその両方として関与していることが基準とされてきた。この区別は重要だ。世界各地の先行研究では、親族オーナーは一般的に、会社の業績を向上させることが立証されている。しかし、親族経営者の影響についてはあまり明確ではない。
筆者らが調べた研究のすべてにおいて、親族の関与はおおむね、会社の収益性にわずかなプラスの影響を及ぼしていた。そして親族による経営よりも、親族による所有のほうがより有益であった。
とはいえ、親族経営で好調な企業もあれば、かなり苦戦している企業もある。これは、親族経営者の中にはスチュワードシップ(受託責任)を発揮する傾向が強い人もいれば、会社を毀損する縁故主義の傾向を見せる人もいるという先行知識と一致する。
このように結果が異なるのは2つの制度的状況――「家族に対する信頼」と、「公的機関に対する信頼」――が国ごとに違うという理由によって、最も適切に説明できることが本研究で示された。