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ファイザー、ビオンテック、モデルナには共通点がある。いずれも、移民が創業者あるいは共同創業者として興した企業であるという点だ。これらに限らず、移民が起業家として成功するのは大きな潮流だが、それには理由がある。出身国を出て馴染みの薄い国に移住するというリスク、さらにどのような起業もそうであるように事業が成功するかというリスク。この両者をいとわないパーソナリティが原動力になっているのだ。本稿では長期追跡研究の結果から、移民の起業家に共通するリスク志向について解説し、投資家や政策決定者が彼らの起業家精神から、どのような利益を得られるかを論じる。


 あなたが幸運にも新型コロナウイルスのワクチンを接種できているなら、感謝すべき相手はおそらく、移民の起業家になるだろう。ファイザー、ビオンテック、モデルナはいずれも、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの研究分野における先駆者であるだけでなく、創業者あるいは共同創業者が移民なのだ[注]

 そして、これらの企業を興した起業家を著名な例として、移民の起業家はいま、大きな潮流となっている。

 2012年の研究では、調査対象となった69カ国のほとんどで、自国で生まれた人よりも他国から移住してきた人のほうが起業する傾向が強いことが示されている。全人口の13.7%が外国生まれの米国では、移民が自営業者の20.2%スタートアップ創業者では25%を占めているのだ。

 また、米国政策基金(NFAP)が実施した2018年の研究によると、米国で時価総額10億ドル以上に達したいわゆるユニコーン企業の創業者や共同創業者の55%が移民である。

 しかし、なぜこれほど多くの移民がリスクを取って起業するのか。その理由は限定的にしかわかっていない。これまでの研究では、この現象を移民先の国の影響によるものと見なしている。たとえば、労働市場における差別選択的移民政策、全体的に移民が多い地域で民族グループ内に特定の機会が存在することなどである。

 筆者は最近の研究で、移民が起業する際の隠れた原動力に関して、さらに掘り下げた。すなわち、パーソナリティに基づいた自己選択である。自発的に他国に移住しようとする判断にも、起業しようとする決断にも、高いレベルのリスクが伴う。

 どのようなタイプの起業家であっても、事業が失敗するリスクに直面する。OECD加盟国数カ国のスタートアップを対象にした研究によれば、創業から3年以上生き残れる企業は60%を超える程度で、7年以上存続できるのはわずか40%である。

 移民という立場も、相当数の付加的なリスクに直面することにつながる。たとえば、失業や不完全雇用、外国人嫌悪や心理的トラウマなどだ。