
カタリン・カリコが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)技術は新型コロナウイルス・ワクチンの基礎となり、それがイノベーションであることに異を唱える人はいないだろう。しかし、彼女の革新的な研究成果が評価されるまでには何十年もの時間を要し、他の研究者たちからは嘲笑を浴びた。本稿では、カリコのようなアウトサイダーが世の中で認められ、成功を収めるための4つの要因を明らかにする。
時折、新しいビジョンや新しい方法論を持ったアウトサイダーが現れて、ある科学分野や産業や文化に革命を起こすことがある。カタリン・カリコもそうだ。カリコは数々の逆境を跳ね返し、メッセンジャーRNA(mRNA)テクノロジーを切り開いた。空前のスピードで新型コロナウイルス・ワクチン開発を可能にしたのは、この技術である。
カリコは、共産主義体制下の東欧ハンガリーで精肉業者の娘として生まれて、水道も冷蔵庫もない環境で育った。大学時代にRNAの研究を始めたが、20代後半で米国に渡る。その後、何十年もの間、論文を投稿しては掲載を却下され続け、他の研究者たちから嘲笑を浴び、国外追放の脅しまで受けた。
しかし、その研究は、ファイザーとビオンテック、そしてモデルナの新型コロナウイルス・ワクチンを開発する土台になった。カリコをノーベル賞候補と呼ぶ研究者も少なくない。
どうして、このようなことが起きたのか。筆者らは、定性的研究、大規模データセットの分析、歴史的研究を組み合わせた10年間にわたる研究を通じて、カリコのようなアウトサイダーの成功につながる4つの要因を明らかにした。
これらの要因は必ずしもすべてが揃う必要はなく、いずれも不可欠というわけではない。それでも4つの要因はすべて、アウトサイダーが壁を打ち破り、その人物の成し遂げたイノベーションが大きな影響を持つ確率を大幅に高められる。