
オフィス勤務とリモートワークが混在するハイブリッドな職場では、従業員が柔軟に働ける仕組みを構築することが欠かせない。ただし、それだけでは帰属意識が低下し、パフォーマンスの低下やバーンアウトに直結するリスクがある。本稿では、従業員の帰属意識を高め、自分たちの仕事に意味を見出してもらうために、組織とリーダーが乗り越えるべき3つの課題を紹介する。
人間の存在意義は仕事だけではない。とはいえ、大人になってからの人生の3分の1を仕事に費やすのであれば、明らかに、仕事に意味を見出すことは極めて有用だ。
仕事から得る意味や目的の深さは、「仕事」と「キャリア」の最大の違いかもしれない。
従業員がチームや組織に帰属意識(ビロンギング)を持っていると、すなわちチームや組織が自分の価値観と合致し、自分のアイデンティティの重要な側面を表現できるという感覚を抱いていると、パフォーマンスが向上するだけでなく、より高いエンゲージメントやウェルビーイングを経験する傾向がある。これは心理学の研究で一貫して示されている通りだ。
それに対し、帰属意識の欠如は、疎外感、バーンアウト(燃え尽き症候群)、パフォーマンス低下のリスクが高くなる。
こうした科学的根拠を踏まえて、組織は従業員の帰属意識を育む必要がある。そして、これからの時代のマネジャーは、従業員を離脱させないために意味と目的を与える仲介者として振る舞う必要がある。これは新しい人材を獲得するより、はるかに難しい課題だ。
ここ1年余りは直接会って話をする機会が減り、ビデオ通話など画面を介したコミュニケーションに頼るようになって、こうした帰属意識を維持することが難しくなっている。リアルなコミュニティの感覚を創出して維持することに関して、人事担当者や上級管理職は新しい必要に直面し、新たなスキルセットが求められていることを理解しつつある。
リーダーが従業員の帰属意識を高めることに関心がないという意味ではない。むしろ、そのための簡潔な方法がないのだ。
特にハイブリッドワークの時代は、組織が勤務形態の柔軟性を高めようとするだけでなく、リモートワークの体制の整備にも力を入れているため、企業文化を「現場で実際に」経験する機会が減りやすい。ただし、オフィスにいる人数が少々減ったからといって、文化がなくなるわけでも、進化しなくなるわけでもない。
それでも、これまで定義してきたような文化の体験が、より拡散したものになり、とらえどころがなく、主観的になるにつれ、組織が人とつながることも、同質の文化の体験を通じて人をつなげることも難しくなっている。仕事はするものであって、行く場所ではないのなら、文化はオフィスの壁に囲まれた中にあるという概念を捨てる時代になったのかもしれない。
私たちは巨大な実験の中で生きていて、テクノロジーも、これまで職場と呼んできたものも、いまや限界を取り払われたという現実を受け入れつつある。これからは健康で、生産的で、創造的で、社会的で、刺激を受けながら生きるための人間的なニーズや欲求を中心に据えるのだ。
ただし、そのためには、組織(およびリーダー)は次の3つの課題を乗り越えなければならない。