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リーダーにはチームを力強く先導することを期待されているが、自分自身がストレスや不安を抱えている時に、それを実行するのは簡単ではない。自分が苦しくてもポジティブな姿勢だけを見せる人もいれば、感情を排して実務に集中する人もいる。しかし、筆者らの研究によれば、みずからのネガティブな感情も率直に打ち明けるリーダーこそ、チームの団結力を高めて、高い成果を上げていることがわかった。本稿では、そのような「感情共有型」のリーダーに変わるための6つの戦略を紹介する。


「仕事と私生活の境界線が曖昧になっていることは、自分でも気づいています。でも、どうすれば課題をすべて片づけられるのか見当がつかないのです。実行しなくてはならないことはあまりに多く、配慮しなくてはならないこともあまりにたくさんあります。(中略)チームのメンバーは私に対して、導き、方向づけ、エネルギーを注入し、アイデアを提示して、活動の骨子を確立するなど、非常に多くを求めています。(中略)重圧に押しつぶされそうです」

 人は誰でも、ストレスや不安などのつらい感情を抱くことがある。しかし、そうした感情にどう対処すればよいかを知ることは、時に容易でない。ほかの人たちにリーダーシップを振るい、サポートを提供することを期待されている立場の人たちにとって、それはとりわけ難しい。リーダーが仕事の場でみずからのつらい感情に対処するには、どのような方法が最善なのか。

 この問いの答えを明らかにするために、筆者らは米国と英国のリーダー30人の協力を得て、2020年の5~6月の4週間にわたり日記をつけてもらった。この30人の中には、さまざまなグローバル企業、国内および国際的な慈善団体、そしてスタートアップ企業のリーダーたちが含まれていた。

 リーダーたちには、以下の3つのテーマについて、週に1回日記を書くよう求めた。(1)いま、どのような問題が持ち上がっていますか、(2)自分が何を必要としていると思いますか、(3)あなたは何を手放しつつありますか、である。

 筆者らの研究に協力したリーダーは例外なく、激しい感情的動揺を経験していると回答した。あるリーダーは、日記にこう記した。「ロックダウンのストレスが大きい。いったい何のためにこんなことをしているのかと考えずにいられない。感情をコントロールすることに苦労している。その悪影響が周囲の人たちに及びつつある」

 別のあるリーダーは、人生への意欲や生きがいを感じられない日があると記した。また、別のリーダーはこう書いている。「怖くて仕方がない。どのように未来を生き抜いていけばよいのかわからない。ましてや、どのようにリーダーシップを振るえばよいのか、まったく見当がつかない」

 調査に協力して日記を書いたリーダーたちは、誰もが同じような感情を味わっていた。しかし、その厳しい経験にどのように対処していたかは一様でなかった。筆者らの分析によれば、ネガティブな感情のマネジメント方法に関して、リーダーたちには3つのタイプがいた。

1. 英雄型:ポジティブなことに意識を集中させ、どんなことがあっても目の前の危機は乗り越えられると、チームのメンバーを納得させるために最善を尽くす。

2. 技術官僚型:感情をすべて排して、戦術的対応に集中する。

3. 感情共有型:みずからの恐怖やストレスなどのネガティブな感情を率直に公表する。

 それぞれのリーダーシップスタイルに強みと弱みがあるが、筆者らの研究によれば、団結力が強く、高い成果を上げるチームを――新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って生じるさまざまな試練にレジリエンス(再起力)を発揮できるチームを――築くことに最も成功しているのは、感情共有型のリーダーだった。

 なぜ、そのような結果になるのか。筆者らが行った研究、そして既存の膨大な量の研究を見ると、感情共有型が英雄型や技術官僚型よりも高い成果を上げるケースが多い理由が浮かび上がってくる。