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米国ではいまもなお、黒人と白人との間に圧倒的な経済格差が存在する。ただし、その隔たりを縮めることは可能だと筆者らは分析する。黒人が白人と同等の所得を得るには、2つのイニシアティブが欠かせない。弁護士、教師、医師をはじめとする高賃金の職業へのパイプラインにある障害を取り除くこと、そして低賃金の職業から高賃金の職業に移動できるキャリアの道筋をつくることだ。本稿では、そのためにビジネスリーダーが果たすべき役割について論じる。


 マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は1966年、経済的安定と人種的平等は連動していると強調した。

 季節労働や一時雇用、あるいは景気循環に左右される雇用は、米国社会に対等な人間として参加するために必要な経済的安定をもたらさない。この点を際立たせることで、キング牧師は、当時の黒人労働者が一般的に得られる雇用機会が、相対的に劣悪であることに人々の目を向けさせた。

 以来、世代交代が進んだいまもなお、米国の黒人は白人との間に存在する圧倒的な経済格差の問題に直面している。

 我々の推定では、年間2200億ドルもの賃金格差が生じている。現在の黒人労働者は低賃金の職種に集中し、高賃金の職種に就いているのは少数で、同じ職種カテゴリーであっても白人労働者に比べて平均賃金が低い。特に、マネジメントやリーダーシップの役割において、それが顕著である。

 しかも、これは労働市場に限った話ではない。

 我々が最新の調査報告書「The Economic State of Black America: What Is and What Could Be」(米国黒人の経済状況:現状とありうる姿)で明らかにしているのは、米国の黒人が労働者としてだけではなく、事業主や貯蓄家、投資家、消費者、そして住民としても、決定的な格差に直面し、米国経済への全面的な参加を妨げられ、経済的流動性を著しく制限されている点だ。

 ただし、現時点で大きな格差があるものの、調査結果からは、その隔たりを縮め、成長とダイナミズム、そして生産性という扉のカギを次々に開けることができるという強い確信も得られている。

 そのためには、2つのイニシアティブが大きな変化をもたらすだろう。すなわち、高賃金の職業へのパイプラインにある障害を取り除くこと、そして低賃金の職業からよりよいキャリアへと進む道筋をつくることである。

 我々の調査から、職業全体の4%に満たない約20種という驚くほど少ない数の職業が、賃金格差総計額の60%以上を占めていることが明らかになっている。

 それらは、大別して5つの職種カテゴリーに分けられる。すなわち、現場労働者のマネジャー、それ以外のマネジャーおよび経営幹部、大学院レベルの教育を要する職業(法律、医療など)、学士号や認定資格を要する職業(教育、会計など)、テクノロジーの専門家(ソフトウェア開発者、コンピュータおよび情報システム分野のマネジャーなど)である。

 さらに、わずか5つのセクター、すなわちプロフェショナルサービス、製造、建設、貿易/輸送/公共サービス、金融サービスが、格差のおよそ85%をもたらしている。