
組織のDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を実現するために、マイノリティの採用に乗り出す企業が増えてきた。ただし、採用はあくまでDEIの取り組みの一つにすぎない。彼らが昇進し、組織の意思決定に関与できるポジションに就くことが不可欠である。本稿では、ドアダッシュの事例をもとに、有色人種の女性のキャリアアップを効果的に支援する方法を紹介する。
有色人種の女性の採用は、企業のダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)の取り組みの一つにすぎない。組織内での昇進もそうであるが、これはいまだに難題となっている。
2020年における有色人種の女性のマネジャー職は12%、シニアマネジャーやディレクター職は9%、経営幹部は3%に留まる。黒人女性は、その割合がさらに低い。もどかしいことに、この数字は過去6年間横ばいだ。
企業がこうした問題の原因である構造的な人種とジェンダーの問題に対処する必要があるのは明らかだ。しかし、有色人種の女性たちが、その実現まで待たなければならないというのは間違っている。
インクルージョン、特にキャリアの向上に焦点を当てたプログラムを立ち上げれば、その間に大きな変化をもたらすことができる。有色人種の女性に対するコーチングや支援と、マネジャー向けのトレーニングを組み合わせたプログラムであればなおさらだ。
本稿では、1つの企業が有色人種の女性のためのキャリアアクセラレーターをどのようにして構築したのか、そして同様のプログラムを組織でどうやって導入することができるのかを解説する。
ドアダッシュの「エレベート」プログラム
筆者のアウェーの勤務先であり、アレンの会社の顧客でもあるドアダッシュは、サンフランシスコに本社を置く物流プラットフォームだ(フードデリバリー会社として認識している人もいるだろう)。同社は組織のあらゆるレベルで女性、有色人種、ノンバイナリーの従業員を増やすことを目指し、「エレベート」と名付けたプログラムを開発した。
ドアダッシュでグローバルカルチャーと帰属意識の向上を担当するバイスプレジデントのリサ・リーは、こう述べている。「こうした人々の重要な視点がビジネス上の主要な意思決定に組み込まれていなければ、イノベーションや成長を逃してしまう」
エレベートは、社内でリーダーの役割を担う、あるいはその役割を担うことを切望する有色人種の女性に特化したキャリア向上の仕組みだ。「フェロー」と呼ばれる参加者は6カ月にわたるコホートプログラムに参加する。下記は、その一部の月々の活動だ。
・社外のエグゼクティブコーチとの1対1のコーチングセッション
・社内のディレクターや経営幹部とのエグゼクティブ・スポンサー・ミーティング
・キャリアワークショップ
・リーダーシップチームの会議への参加
フェローはプログラムの最後に、上司、スポンサー、コーチ、プログラムマネジャーと協力してキャリアプランを作成する。また、プログラムで得た最重要点を3つ振り返り、経営幹部を含むシニアマネジメントチームのメンバーや上司も出席する「卒業式」でそれを発表する。
「プログラム終了時のスピーチや、エレベートのメンバーが集団で祝うのは、私が会社で経験した中で最も心温まるものだ」と語るのは、同プログラムのスポンサーであり、エンジニアリング担当バイスプレジデントのライアン・ソコルだ。「このプログラムは自信を育み、ドアダッシュの明日を担うリーダーを育成する」
現在、エレベートは3回目のコホートを迎え、参加者のデータから、次の3つの分野で大きな影響を及ぼしていることが確認されている。
1. キャリアの向上:プログラム終了後6カ月以内にフェローの38%が昇進した。エレベートに参加していない同僚と比べて大幅な増加だ。
2. 採用と定着:マネジャーがフェローを他の人に推薦するケースが著しく増えている。これは有色人種の女性の採用と定着(リテンション)にとって朗報だ。
3. キャリアナビゲーション:フェローは新しい職務や昇進のために、より戦略的に自分を位置付けることができるようになった。また、昇進を妨げる可能性のあるスキル不足にも対処した。