
人工知能(AI)の進化により、マネジャーの仕事の多くが機械に取って代わられた。ただし、人間がコンピュータに勝る認知能力がある。それは「非常にゆっくり考える」ことだ。非常にゆっくり考えることでリフレーミングがうながされ、既存の発想から脱却でき、イノベーションの可能性が高まる。本稿では、リフレーミングの能力を伸ばす4つの方法を紹介する。
マネジャーが事業を率いる際に使うあらゆる手段の中で、最も不可欠なのは考えることである。これは直感的思考と意識的思考という、2つの異なる方法による情報処理を意味する。すなわち、ノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンが名付けた「速い思考」と「遅い思考」である。
今日、コンピュータはこれら両方において人間をますます凌駕している。ある状況に関するルールとパラメータがわかってさえいれば、コンピュータは持ち前の計算力によって、意識的推論の作業で人間を容易に打ち負かす。マネジャーは、投資ポートフォリオの構築、価格設定、サプライチェーンリスクの把握などを行うために、日頃から数理最適化とシミュレーションに頼っている。
直感的な要素が大きいパターン認識では、これまで人間のほうが優れていたが、いまでは機械学習を用いて、大量のデータ群を基に「コンピュータ自身の直感」を身に付けさせるよう訓練できる。最近の研究では、CTスキャンによるがんの発見や投資対象の選択といった専門家が行う作業でも、コンピュータは人間に勝ることが立証された。
こうした状況の中、マネジャーは組織に価値を付加し続けることができるのだろうか。幸いにも、人がコンピュータに勝る一つの認知能力がある。「非常にゆっくり考える」ことだ。