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アップル、アマゾン・ドットコム、グーグル、そしてウィーチャット(微信)と、デジタルプラットフォームに基盤を置くエコシステムビジネスは、ますますその存在感を増している。スマートフォンメーカーとして誕生したシャオミ(小米科技)も、その一つだ。いまではエレクトロニクスの巨大企業として、世界的ブランドに成長した。歴史の浅い同社がここまで急成長を遂げた理由は、その革新的なビジネスモデルにある。本稿では、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)型戦略とエコシステム型戦略を融合させた、同社のアプローチがどのようなものであるかを論じ、その主要な3要素について解説する。


 アップル、アマゾン・ドットコム、グーグル、そしてウィーチャット(微信)……この10年の間に、デジタルプラットフォームに基盤を置くエコシステムビジネスが存在感を増してきた。これらの企業はすべて似たようなモデルを採用しているように見えるかもしれないが、実際には、プラットフォーム企業のタイプにより大きな違いがある。

 筆者らは、北京に本拠を置くエレクトロニクス巨大企業シャオミ(小米科技)に関する最近の研究と、他のいくつかの有力企業に関する二次研究を基に、3種類の戦略を見出した。すなわち、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)型、エコシステム型、そしてこの両者の要素を兼ね備えた新しい融合型のアプローチである。

CVCアプローチ

 おそらく、ビジネスを拡大させるための最も定番のアプローチは、CVC型だろう。既存企業がスタートアップ企業に直接投資するものだ。投資対象は、自社にとって戦略上の恩恵が期待できる企業か、金銭面でのリターンが期待できる企業のいずれかになる。

 たとえば、インテルは投資部門のインテルキャピタルを通じて、自社の中核事業を補完する製品やサービスを持つスタートアップ企業に投資している。そうすることで、自社の半導体に対する需要を増やすことを目指しているのだ。

 このような戦略的動機によって投資を行う企業は、自社の中核事業の利益を伸ばすことを優先させるために、金銭面でのリターンをあえて諦めている場合も多い。

 一方、経済的動機でCVC型モデルを実践する企業は、中核事業との戦略的連携にはそれほど関心を払わない。それよりも、金銭面でのリターンを生む投資を行うことを重んじる。

 研究によれば、たとえばオラクルが投資先の決定で重視するのは、自社が独立系のVCよりも大きな価値をもたらせると思える会社に投資することである。そうすることで、より大きなリターンが生まれると考えているのだ。

エコシステムアプローチ

 エコシステム型の戦略はCVC型とは異なり、大企業側がパートナーであるスタートアップ企業の株式を取得しない場合が多い。

 代わりに、エコシステムのリーダーである企業は、自社のテクノロジーとリソースを活かして、自社のビジネスを補完する小規模企業のネットワークを築く。そのネットワークには、自社の中核的なアーキテクチャやプラットフォーム、あるいは主要リソースの土台の上にプロダクトをつくり出し、販売する企業を集める。

 その最たる例が、アップルのアップストアだ。

 エコシステムのリーダーであるアップルは、アプリ開発者に対して、アプリを制作してアップストアで販売するために必要なツールを提供している。しかし、それらのアプリ開発会社は、アップルに所有されているわけではなく、オペレーションに関して全面的な独立性を持つ。

 エコシステム型モデルでは、パートナー企業はおおむね独立を維持し、あくまでも市場におけるインセンティブに突き動かされて、自社とプラットフォームの双方のために価値を協創する。自社の株式を保有する大企業に命じられて動くわけではない。