2021年12月号より編集長が大坪亮から小島健志に交代し、新体制となりました。DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューでは、これからもリーダーに資する情報を提供し続けて参ります。
グラットン教授が示す
未来を見通す3つのポイント
いつもご愛読いただき、誠にありがとうございます。
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)では現在、ウェブセミナーに力を入れています。10月には「新しい働き方、新しい職場」と題したイベントにおいて、『LIFE SHIFT』(ライフ・シフト、東洋経済新報社)の著者であり、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授へのインタビューが実現しました。
職場や働き方など数々の未来予想図を描いてきたグラットン教授は、将来をどのように見通しているのでしょうか。教授は「常に3つのトレンドを見ている」と述べました。具体的には、1つ目が「テクノロジーが働き方をどう変えるのか」であり、2つ目が「人口動態」、そして3つ目が「社会の変化」です。たとえば、働く女性の増加で日本がどう変わるのか、あるいは在宅勤務が広がることで何が起きるのかについて、新聞や雑誌、ブログなど世界中の情報を集めているそうです。さらに、パンデミック前までは自ら世界中を飛び回り、論文や記事の執筆作業を通じて、その考えをまとめてきたと言います。
それでは、パンデミックの影響は予想できたのでしょうか。グラットン教授は「私の理解の外にあった」と首を横に振り、「パンデミックの長期化は誰も予想できなかった」と加えました。コロナ禍で始めた教授の日記を見返しても「私だけではなく誰の予想も当たっていなかった」そうです。
グラットン教授のような方でも難しい未来の予想を、私たちができるのかといえば、残念ながら簡単なことではないでしょう。社会を動かす変数はパンデミックだけではありません。技術進化や気候変動問題、米中対立、社会の分断など、世界の不確実性が一段と高まっています。ですが、グラットン教授は「こうした危機を機会ととらえるべきだ」と指摘します。
複雑性がさらに増し、状況も刻々と変わる。そのような「正解のない世界」において、ビジネスリーダーが前進するためには何が必要でしょうか。それは、ライバルに負けないような、よりよい未来をつくる意思です。株主だけではなく、従業員や取引先、社会や地球環境などあらゆるステークホルダーの持続可能性に考えを巡らし、企業や団体の存在意義を明確にしたパーパスを掲げることです。
リーダーの強い意思が羅針盤となり、共感を生み、人材や顧客、地域そして資金を引きつけます。世界中の多様な人材が結集し、それぞれの専門知識やスキルが結びつき、チームや社会の発展につながるのです(なお、パーパスについて詳しくお知りになりたい方は、完売したDHBRの人気特集を書籍化した『PURPOSE パーパス』を刊行しましたので、ぜひご覧ください)。
さて、この度編集長に就任しました、小島と申します。未来をつくるリーダーに、次なるコンセプトと思考のフレームワークを提供し、不確実な世界においても自信をもって前進できる、その一助となる媒体を目指してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。(編集長・小島健志)